「英語力を活かしたい」「自由と多様性の国に移住したい」とアメリカで働くことを望む人も増えてきています。
しかし、日本人がアメリカで働くためにはビザとは別にEAD(労働許可証)の取得が必要になるケースがあります。
EADを取得すると職種や雇用形態に関わらず、基本的にどの会社でも働くことができるようになります。
今回は、EADの申請・取得方法について解説していきます。
EAD(労働許可証)とは?
アメリカでは外国人の不法就労などの問題があり、その数は数百万人とも言われています。
そのため、雇用主は就労可能な人物かを確認することを義務づけられています。
就労可能かを確認するためのものがEAD(Employment Authorization Document :労働許可証)で、アメリカ市民権移民局が発行します。
形状は顔写真の載ったカードで、永住者ではない非移民ビザを持つ外国人が一時的にアメリカで働くためには必須です。
もちろん日本人も対象となっていて、永住権を持たずにアメリカで働こうと思った際には申請が必要になります。
対象者は多くない
ただし、その対象となる人はあまり多くはありません。
日本企業の駐在員やワーキングホリデーとして働く人などには、そもそも就労が可能なビザが発行されているため必要ありません。
対象はビザのカテゴリーによって決まっています。
2022年からルールが変わり一部は取得の必要がなくなりましたが、EADがない状態で働いてお金をもらってしまうと、違法労働とみなされ最悪の場合国外退去になる可能性があります。
自分が対象になるのかは、しっかりチェックしておきましょう。
EADを申請できるビザは?
全ての非移民ビザの保有者がEADを取得しなければ働くことができないわけではありません。
EADの取得が必要なビザカテゴリーのうち日本人に多いものをピックアップしました。
・キャンパス外で働く留学生(F -1ビザ)
・卒業後に実地研修を希望する専門学校の留学生(M-1ビザ)
・インターンシップなど交流訪問者の配偶者(J-2ビザ)
・特殊技能職の配偶者(H-4ビザ)
・アメリカ人の婚約者、配偶者(Kビザ)
・グリーンカード(永住権)申請中の人
主なものを紹介しましたが、その他にも該当する人はいるので詳しくは移民局のウェブサイトで確認してください。
グリーンカード(永住権)との違い
アメリカには出入国は自由、滞在にも期限がなく、職業も自由に選択できるビザの永住権(グリーンカード)もあります。
永住権を取得すると、アメリカ人とほぼ同様の社会的資格を得る事ができ、更新を続けることで永久に滞在することが可能になります。
ただし、グリーンカードを取得するには数年かかることも普通で、この間にアメリカで働いていくためにはEADが必要となります。
ルール変更でL-2・E-1/E-2はEAD不要に
日本企業の駐在員の配偶者(L-2ビザ)や貿易・投資駐在員の配偶者(E-1ビザ・E-2ビザ)は従来は働くためにはEADの取得が必要でした。
しかし、2021年にルールが変更され、EADの取得なしに就労が可能になりました。
主たる駐在員の配偶者は「ビザステータスに付随して」就労することが認められるようになっています。
ただし、その子どもはこれまで通り対象に入りませんので、働くためにはEADの申請が必要となります。
このルール変更で、2022年1月31日以降にアメリカに入国した対象の人は、これまでのようにEADを申請する必要はなくなり、自動的に就労が可能になります。
申請の手続きをしなくても働けるのは大きな変化ですよね。
ただし、これよりも前にEADを取得している人は自動で変更されません。
一度アメリカを出国し、入国する際に手続きすると新しいステータスに更新することができます。
EAD申請に必要な書類
申請は郵送で行います。
以下は郵送の際に必要となる書類です。
・フォームI-765(労働許可申請書・移民局のウェブサイトからダウンロード可能)
・I-94(出入国記録)のコピー
・パスポートのコピー
・顔写真とビザのページ
・戸籍謄本
・学生の場合はI-20(入学許可証)のコピー
・更新の場合は現在のEADのコピー
・パスポートサイズの証明写真2枚(30日以内に撮影したもの)
・申請料 (小切手かマネーオーダー)410ドル(2022年7月時点)
宛先は「U.S. Department of Homeland Security」
郵送先は住んでいる州やビザのカテゴリーによってそれぞれ異なるので、移民局のウェブサイトで確認してください。
ちなみにアメリカの郵便事情はかなりルーズなので、配達されたか追跡できるような方法での郵送をおすすめします。
EADの取得には時間と手間そして費用がかかります。
早めに確認して自分に必要な書類を準備をしましょう。
早くても6週間はかかる
EADの申請は郵送、申請の許可が出ればEADカードも郵送で届きます。
基本的に手続きは全て郵送で完結するため、どこかに出向く必要はありません。
申請書類をまとめて郵送で提出すると、約1〜2週間後に申請を受理したという内容の手紙(I -797C)が移民局から届きます。
さらに審査の結果、EAD取得許可が出た人には、その後90日以内にEADカードが届きます。
許可されなかった人には、その理由が書面で届きます。
90日を越えても何も届かない場合は、移民局に問い合わせるか、ウェブサイトで審査状況を確認してみましょう。
他の申請状況にもよりますが、申請してからEADカードが届くまで約6〜12週かかると言われています。
審査状況の確認方法
申請受理の手紙が届いたら、移民局のウェブサイト「CASE STATUS ONLINE」から審査状況を確認することができます。
このウェブサイトは、届いた手紙に記載されている受理番号を入力すると、審査の状況が確認できる便利なものなのでぜひ活用してください。
申請からカードの受け取りまでは数ヶ月かかることもあります。
受理されても、その後なかなかカードが届かないと、却下されたのではと不安になると思います。
そんな時は、サイトでチェックすると安心できるかもしれませんね。
EAD申請の注意点
日本で戸籍謄本を取得しておく
申請に必要な書類として戸籍謄本がありますが、提出する際には戸籍謄本1通とその英訳1通が必要になります。
自分で翻訳してもいいですし、翻訳サービスもありますが、出国する前に複数枚もらっておいて準備しておくのがおすすめです。
申請期間中は出国NG
申請を終えたから一息ついて一度日本に帰ろうとか、国外に旅行に行こうとか思ってしまいますよね。
これ実は気をつけた方がいいです。
申請期間中に出国してしまうと、提出した書類の一つであるI-94(出入国情報)が更新され再提出を求められる場合があります。
申請を出しても却下されたり、再提出でさらに時間がかかったりすることがあるので申請期間中は気を付けてください。
有効期限に注意
EADには約1〜2年の有効期限があり、1度取得したら終わりではなく必要に応じて更新していかなければ働き続けることはできません。
180日前から更新の申請が可能なので、期限前に更新ができるように早めに準備をしましょう。
せっかくEADを取得して働いていても、期限が切れてしまうと、その間働けなくなってしまいます。
また、EADの期限はI-94(出入国情報)やビザの期限によって制限されます。
例えばEADの有効期限が1年あったとしても、I-94の期限が半年しかない時は、EADも半年の期限になってしまいます。
そういう場合は、I-94の期限を延長してからEADの更新をしなければなりません。
I-94やビザの有効期限についても合わせて考えておきましょう。
まとめ
今回はEADについて解説しました。
非移民ビザを持っているけどEADを申請していない人、アメリカに留学を考えていて働いてみたいという人はEADの申請を検討してみてください。
また、元々の企業駐在員の配偶者などはEADの取得なしに働くことができるようにルール改正されています。
申請の対象かどうかや、最新の申請方法は移民局のウェブサイトで確認してみてください。