1986年に男女雇用機会均等法が施行されてからかなりの期間が経過し、女性の活躍が目立っています。
それでも女性が昇進したり、管理職になるケースは限られていると感じる人は多いのではないでしょうか。
こちらでは、女性の昇進率の現状を把握し、昇進を難しくしている理由を取り上げます。
女性が昇進するために、また昇進を目指すのに何がポイントになるか考えていきましょう。
女性の昇進率の現状は?
女性管理職は約8%
政府は女性の管理職を増やすべく、2020年までに「女性管理職比率を30%に引き上げること」を目標に掲げていました。
しかし、帝国データバンクが1万社以上の企業を対象に行った「女性登用に対する企業の意識調査」の結果を見ると、2020年の女性管理職の割合は7.8%に留まっています。
この調査自体は2013年から実施され、2020年の女性管理職の割合は過去最高でしたが、前年よりも0.1%増という結果でした。
女性管理職の割合は、企業規模や業種により大きく異なっています。
企業の規模で見ると、小規模企業では女性管理職の割合が10%以上で、規模が小さい会社ほど女性管理職のがいる割合が大きいことが報告されています。
また、業種で言うと小売りや不動産、サービスや金融などで女性管理職の比率が高くなっています。
世界に遅れをとっている
日本において女性の昇進率が低く推移していることは、世界的な流れと逆行しています。
2018年のデータでは、世界の女性管理職の割合は平均して27.1%でした。
G7を構成する主要7か国の数値を見ると日本の状況には改善の余地が大いにあり、肯定的な見方をするなら女性管理職を増やすキャパシティーがあると理解できます。
女性が昇進・出世しづらい理由とは?
年功序列、社会の固定観念がある
女性が昇進しづらい背景には、年功序列制度が関係していると考えられます。
年功序列は能力よりも年齢や社歴が重視されるため、出産や育児などで長期休暇を取らざるを得ない女性には不利に働きます。
また、社会の固定観念が女性の昇進を難しくしている側面もあります。
だいぶ解消されてきたとはいえ、「男性は外で仕事をし、女性は家で家事や育児を行う」というイメージが染みついている層は性別を問わずに一定数います。
女性の昇進をはなから考えようとしない無意識の思い込みが女性の昇進にハードルを設けていると言えます。
家事・育児の負担が大きい
実際に仕事と家事や育児との両立が難しいことも昇進の大きな障壁となります。
近年では育児休暇や介護休暇などの制度が整い、男性女性に限らず取得できますが、長期にわたってそれらの制度を利用する傾向があるのは女性です。
女性は男性に比べて家事や育児にかかわる時間が長くなりやすいため、いざというときに仕事を優先できない場合があり、そもそも長時間勤務が要求される管理職につきづらい状況になりやすいと言えます。
管理職になるモチベーションを保ちにくい
管理職につく男性の仕事ぶりを見て、管理職を目指したいと考えなくなることも女性の昇進率の低さにつながっています。
目の前にいる管理職がいつも忙しそうで、残業や休日出勤が当たり前のようになっており、重い責任を負っている様子を見ると管理職に魅力を感じなくなるのは当然でしょう。
管理職へのモチベーションの低さが、昇進しづらいというよりも、昇進を目指さない理由となっています。
身近にロールモデルがいない
そもそも女性管理職が周囲におらず、目指すべきお手本となるロールモデルがいないことも昇進に二の足を踏む理由となっているようです。
仮に女性管理職がいたとしても、仕事も家のことも完璧にこなしている方だと自分には到底できないと感じてしまい、昇進を目指す上では逆効果です。
自分でもできる、目指せると思える親近感を感じるロールモデルがいると、管理職を具体的な目標に掲げやすくなるでしょう。
女性が昇進を目指す方法は?
コミュニケーション能力を武器にする
外資系企業は女性を管理職に多く登用して成功を収めていますが、その背景にあるのがダイバーシティ(多様性)の考え方です。
画一的な組織は現実的なものではなく、リスクであると考えていることも女性管理職の多さに結び付いています。
人材の多様化は、企業の大きな力になります。
女性の持ち味とされる資質を磨いていくと、昇進を目指す上で自信となるに違いありません。
女性が得意とするコミュニケーション能力は組織を活性化し、変革をもたらすカギとなります。
細やかな気遣いを含め、コミュニケーション能力を効果的に発揮できるよう、ブラッシュアップしていきたいものです。
コミュニケーションが上手にできる人は立場を超えた協調が可能になり、スムーズに仕事を進める点で役立ちます。
経営・マネジメントスキルを高める
管理職に求められる重要な要素の一つが、経営やマネジメントスキルです。
リーダーとなる人は今後の戦略や課題を考慮し、達成可能な目標を定めて、そのための人材確保や仕事の割り当て、管理業務を行います。
経営やマネジメントにおいて、判断力は重要です。
現状を把握して分析し、適切な判断を下していく必要があるということです。
管理職にある人は、自分で仕事をするというよりも部下に任せて経緯を見守り、成功したときは褒め、失敗したら一緒に反省し、次につなげる努力が大事です。
さらに、部下がどう成長していきたいかを理解し、アドバイスしたり、悩みを共有して方向性を示すこともマネジメントに含まれますので、まずは聞き上手になることが大切です。
目標とキャリアビジョンを明確にする
入社前の面接では、将来の夢やなりたい自分について意見を求められることがあります。
目標や将来設計を明確化しておくのは良いことです。
管理職になるために明確な目標を立て、キャリアビジョンを設定すると昇進への近道となることでしょう。
単に昇進したいと考えるだけでなく、何歳までにどの役職に就き、どれくらいの年収を得られるようにするといった、数値を含めた目標を立てることがカギとなります。
目標を立てたならそれに向かって個人的に勉強したり、役立つセミナーに積極的に参加すると、目標が近づくでしょう。
周りの目を気にせず自信を持つ
管理職となる上で周囲の意見を聞く姿勢は大切ですが、周りの目を気にしすぎるとブレが生じたり、自信を無くしてしまうため注意が必要です。
女性管理職はまだまだ少ないことから、特段何かをしなくても目立ったり、批判的な意見を聞くこともあるでしょう。
もちろん、自分に落ち度があれば謝罪し、改善していく必要があります。
しかし、やるべき仕事をやっているのにも関わらず、好意的に見てもらえないのであれば受け流したり、あえて嫌われる勇気を持つことも大事です。
まとめ
日本では女性管理職がまだまだ少数派と言えます。
自分や社会の意識、家事や育児にかかわる時間の多さが昇進を妨げている現実がありますが、国を挙げて女性管理職増加を図っています。
明確な目標を掲げてそれに向かって努力すれば、昇進できる確率は高くなるはずです。
女性が得意とするコミュニケーション能力を磨いたり、経営視点を持つよう努力し、自らの意識改革を進めると管理職が身近なものになるでしょう。