調理に関する資格といえば、飲食店などで料理を作って提供するために必要な調理師免許がすぐに思いつくかもしれません。
しかし、調理師免許の上位に位置する専門調理師・調理技能士という資格があるのはご存じでしょうか。
調理の世界でキャリアアップをはかるためには必須のライセンスである専門調理師・調理技能士とはどのような資格なのか、取得方法や試験の難易度などもあわせて解説していきます。
専門調理師・調理技能士とは?
区分 | 国家資格 |
---|---|
カテゴリ | 料理・食品 |
受験資格 | ・実務経験8年以上で、調理師免許を保有している期間が3年以上 ・調理師養成施設で1年以上学び、実務経験6年以上、調理師免許を保有している期間が3年以上 |
試験日程 | 毎年7月〜8月、1月〜2月(年2回) |
試験方法 | 筆記試験・実技試験 |
試験会場 | 全国各地 |
受験料 | 筆記試験:3,700円 実技試験:18,800円 |
登録・更新 | なし |
難易度 | |
おすすめな人 | 社会人 |
飲食店やホテル、旅館などで料理を作って提供する人は調理師免許が必要ですが、その調理師免許の上位資格にあたるのが専門調理師・調理技能士です。
これは、調理の技術や技能を⾼める一方で、調理師という職業の地位向上を図り、あわせて⾷⽂化の発展や国⺠の⾷⽣活の向上・改善に役立てようというねらいで、昭和57年に創設されたものです。
試験自体は1つでOK
専⾨調理師・調理技能⼠になるためには、調理技術技能評価試験という国家試験を受ける必要があり、合格すれば厚生労働大臣から「専門調理師・調理技能士」という称号が与えられます。
また、専門調理師・調理技能士は2つの資格名が並列していますが、これは資格の設立根拠となる法律が2種類あることによるもので、
- 専門調理師:調理師法
- 調理技能士:職業能力開発促進法
に基づく称号となります。
しかし試験自体は調理技術技能評価試験に一本化されていますので、この試験に合格すれば同時に2つの称号を与えられることになるのです。
専門調理師・調理技能士を取得するメリットは?
講師になれる
専門調理師・調理技能士の資格が取得できれば、調理師免許取得者と同様に、飲食店、宿泊施設、病院、福祉施設、給食センターなどで調理者として働くことができます。
しかし専門調理師・調理技能士の有資格者には、これに加えて調理師学校の講師という道も開けてきます。
これは調理技術技能評価試験に合格した時点で調理師学校の教員資格も取得できるためで、調理の現場だけでなく、教育者としても活躍の場を広げることができるようになるのです。
キャリアアップにつながる
また、調理の現場においても、一般の調理師よりも一段上の知識や技能を身につけたプロフェッショナルとして、専門的でハイレベルなポジションで腕を振るうことが可能になってきます。
社会的な評価も上がり、飲食店の調理責任者や料理長といったリーダー的な立場にもさらに近づきやすくなるでしょう。
そうなれば給与や待遇面での厚遇はもちろん、転職などでキャリアアップを図る際にもがぜん有利なアピールポイントになってきます。
専門調理師・調理技能士の取得方法は?
専門調理師・調理技能士の資格を取得するためには、調理技術技能評価試験に合格しなければなりません。
試験には受験資格があり、以下の3つに区分されています。
実務経験によるもの
受験には8年以上の実務経験が必要です。
このうち調理師の免許を有していた期間が3年以上ある人だけが受験できます。
またパートやアルバイトなど、正規職員以外の人は、週4日以上かつ1日6時間以上の実働勤務が必要で、反復継続的に調理業務に従事していることが必須条件となります。
指定の調理師養成施設で1年以上調理に関する学科を修めた卒業者
受験には6年以上の実務経験が必要です。
このうち調理師の免許を有していた期間が3年以上ある人だけが受験できます。
職業能力開発促進法に基づき、調理に関し専門課程の高度職業訓練または普通課程の普通職業訓練修了者
受験には7年以上の実務経験が必要です。
ただし普通職業訓練または高度職業訓練を受けた期間を含むものとします。
このうち調理師の免許を有していた期間が3年以上ある人だけが受験できます。
なお、専門課程の高度職業訓練とは「調理技術系調理技術科」をさします。
また普通課程の普通職業訓練とは「調理系日本料理科」「調理系中国料理科」または「調理系西洋料理科」のことをいいます。
試験は筆記と実技
受験科目は筆記試験と実技試験の2つです。
筆記試験では、調理に関するものや衛生、栄養、法規関係など7つの項目が問われます。
また、実技試験では、すし料理や中国料理といった6つの料理ジャンルの中から1つを選んで受験します。
各ジャンルとも主に仕込みや盛り付けといった点は必ずチェックされる審査ポイントとなっています。
専門調理師・調理技能士の難易度は?
調理技術技能評価試験の合格基準は、筆記試験に関しては、真偽法により、正答数から誤答数を差し引いた数が問題数の50%以上です。
また、実技試験は満点の60%以上となっています。
- 令和2年:53.9%
- 令和元年:67.8%
- 平成30年:65.6%
直近の実績としては上記のようになっているので、平均すると合格率は約60%程度となるでしょう。
この合格率から見ると、試験の難易度は高めであるといえます。
筆記試験は〇か×かの選択式であり、奇をてらった難問などはありませんが、調理に関する内容だけでなく、衛生面や栄養面など出題内容は多岐にわたっています。
事前に参考書などで出題傾向をしっかり把握しておく必要があります。
また、実技試験では、制限時間内にいかに丁寧な仕事ができるかという点がポイントとなってきます。
作業開始直後の手洗いや、まな板の使い分け忘れなど、衛生面でのうっかりミスは大きな減点にもなりますので特に注意が必要となります。
専門調理師・調理技能士はこんな人におすすめ!
専門調理師・調理技能士は、調理師の上位資格ですので、料理人としていっそうスキルを磨きたいという向上心のある人にぴったりの資格となります。
また、調理の現場にとどまるだけでなく、料理長や店舗責任者など、業界の組織運営にも携わってみたいという管理職志向の人にも、不可欠なライセンスとなるものです。
この資格があれば同時に調理師学校の講師にもなることができますので、人材を育成してみたいという指導者希望の人にとっても、うってつけの技能だといえます。
さらに今後いっそうグローバル化が進む中で、日本の食文化はますます注目を浴びるコンテンツとなることが見込まれます。
食のプロフェッショナルとして、世界に情報を発信していく役割を担うとすれば、専門性を深めた証であるこの資格は欠かせません。
日本食を新たなカルチャーとして深化させたいというプロデュース気質を持つ人にとっても、専門調理師・調理技能士は取得しておきたいライセンスの一つといえるものです。
キャリアアップをはかるなら必携の資格
専門調理師・調理技能士は、調理師としての長年の実務経験を積むことで初めて受験資格が与えられます。
合格すれば自動的に調理師学校の講師の資格も取得することがき、調理に関する知識や経験、スキルを極めた人として社会的にも高く評価される資格です。
調理技術にいっそう磨きをかけたい人はもちろん、収入や待遇なども含めて調理業界の中でキャリアアップをはかっていきたい人にとっても必携の資格であるといえます。