少子高齢化の影響で、どの職種でも人材不足が懸念されていますが、その中でも深刻とされるのが看護師です。
社会に欠かせない大切な仕事で需要も高いですが、仕事を辞める看護師も多くいます。
こちらでは、看護師が仕事を辞めたいと考える理由とともに、退職する前に考えておきたいこと、後悔しないためのポイントなどをご紹介します。
看護師を辞めたくなる理由は?
2017年に日本医療労働組合連合会が実施した看護職員の労働実態調査結果によると、現役の看護師のうち4人に3人が離職を考えたことがあると回答しました。
また、資格を持ちながら看護師として働いていない、いわゆる「潜在看護師」は看護師全体の約3割を占めるとされ、実際に辞職した看護師が多いこともわかります。
では、どんな理由で看護師を辞めたいと考えるのでしょうか。
身体的・精神的健康
都道府県ナースセンターが実施した看護職の再就業実態調査によると、フルタイムで働く看護師が離職する理由の第1位は自分の身体的な健康状態です。
第2位に自分の精神的な健康状態、第3位に残業の多さを挙げていることから、仕事の大変さとともにプライベートが確保しづらい実態が明らかになっています。
妊娠・出産
正規の看護職員が仕事を辞めた理由第4位と非正規職員の辞職理由第1位は同じで、妊娠・出産でした。
女性にとっての重要なライフイベントを迎えるにあたり、仕事との両立が難しいと考える看護師が多いことがわかります。
非正規職員の場合、上記の理由を挙げた人は30%以上に上り、そのしわ寄せが正規職員に及んでいる可能性も否定できません。
責任
また、キャリアが長い看護師が仕事を辞めたい理由は別のところにあるようです。
勤務歴が長くなると主任やリーダーなど責任ある仕事を任されるようになり、上層部からも部下からも頼られる存在になります。
そのことが重荷となり、退職を考える人が一定数います。
キャリアとともに自分の年齢も上がると体力面で限界を感じたり、結婚など私生活を充実させたいと考え、辞職を考える人もいるようです。
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看護師を辞めて後悔することは?
厚生労働省が平成24年に実施した看護職員の現状と推移調査によると、資格を持ちながら看護師として働いていない潜在看護師約71万人のうち、再就業した方は14万人に上っています。
この中には、妊娠・出産など一時的に仕事を辞めざるを得ない状況だった人も含まれますが、看護師を辞めて後悔し、復職した人も一定数いたと推察できます。
収入
看護師を辞めて後悔したことの一つとして、収入面を挙げる人が多いです。
在職中には気が付かないかもしれませんが、看護師は他の仕事に比べて給与水準が高いため、別の仕事に就いたときにその差が歴然としていることに気づき後悔するようです。
やりがい
また、やりがいの面でも、看護師を辞めて後悔することが多いと言われます。
看護師は人の命を預かる仕事で重圧もかかりますが、職業人として一目置かれ、誇りを持てる仕事は他にそうそうないため、辞めて後悔することがあるようです。
ギャップ
看護師に限らず、未経験の仕事に転職する場合、どんなに年齢が高くても、看護師のキャリアで秀でたものを持っていたとしても、新人扱いとなります。
看護師としてのキャリアが長かった人ほど、別の仕事に就いた時の周囲の反応や扱いにギャップを感じ、辞めなければよかったと考えてしまうようです。
人間関係に悩んで看護師を辞めた人の中には、仕事や職場が変わっても同様の悩みやストレスを抱える経験をし、結果的に看護師を辞める必要はなかったと後悔するケースもあります。
看護師を辞める前に考えてほしいこと
今後の収入と生活費
仕事を辞める前に考えたいことの一つが収入です。
看護師を辞めた後、生活していくための収入を確保できるか考えることが重要です。
看護師は他の仕事に比べ給与が高いため、知らず知らずのうちに生活水準を上げていることもあります。
そうでなかったとしても、職場の寮に入っていれば、退職に伴って家賃が発生するようになります。
当たり前と考えていた福利厚生が受けられなくなりますので、思った以上に生活費がかかることを実感するかもしれません。
辞めた後の生活費を計算したり、将来のキャッシュフロー表を作ると冷静に考えられるようになり、安易に辞めることは避けられるでしょう。
将来の展望や仕事の条件
仕事を辞める前に、これからの展望や仕事の条件を考えてみましょう。
これらの点は人によって考え方が異なるため、正解は人の数だけあります。
例えば、家族やプライベートを充実させたい、夜勤がない仕事がしたい、土日祝日が休みといった条件を挙げるかもしれません。
その条件を満たす仕事を考えた場合、必ずしも別の仕事に就く必要はなく、看護師でも実現できる場合があります。
看護師自体を辞めるのではなく、クリニックなどに転職することで解決できるケースも多々あります。
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看護師を辞めて後悔しないためのポイントは?
辞める理由を明確にする
看護師を辞める場合、いくつかのポイントを考えてから退職を決意すると、後悔の気持ちを最小限に抑えるとともにその後につながります。
その一つが、辞める理由を明確にするということです。
なんとなくや、人に流される形で退職してしまうと、同じような理由で転職を繰り返したり、仕事に対してポジティブな気持ちを持てず、後悔の気持ちが強くなりがちです。
辞める理由とともに、自分の人生で重視したい点を真剣に考えると、辞めた後の後悔が少なくなるでしょう。
キャリアプランを立てる
また、退職後のキャリア形成について、目標や具体的なプランを立てるのも大切です。
その際、幅広い立場の人から意見を聞くとよいかもしれません。
視点を広く持ち、今後の展開を熟慮することが後悔しないためのポイントです。
また、看護師は忙しいのが当たり前で、休むことに罪悪感を持つ人も多いですが、辞めるにあたって心身を休める時間を大事にしましょう。
有休をきちんと消化してリフレッシュの機会を設け、次への活力を得るようにすると後悔の念が減り、新たなステップに進むことができるはずです。
看護師の仕事は辞めない方がよい?
看護師の仕事を辞めた方がよいかどうかは、その人の考え方や状況により異なります。
どちらかというと後ろ向きな理由で辞職を考える人は、リアルな現実を考えてみるとよいかもしれません。
まず、看護師の給料や待遇は他の職種に比べて高く、充実しているということです。
もちろん、仕事の大変さや拘束時間なども関係しますし、人生の成功はお金だけで判断できるものではありませんが、今の収入を維持したい場合は慎重に検討すべきでしょう。
また、いったん辞めてしまうと看護師の仕事に復帰するのは大変な面がありますので、安易な辞職は避けるべきです。
看護師は引く手あまたで、仕事に復帰することは可能ですが、一時的にキャリアが中断されてしまうと自分自身の気持ちがついていかなくなることがあります。
長期にわたってキャリアが途切れてしまうと、最新の医療技術についていけないなど、心理的にもスキルの面でもハードルが高くなるようです。
勤務先をスムーズに辞める流れは?
看護師の仕事を辞める以外の選択肢として、転職で職場を変えることも考慮したいものです。
現在の勤務先をスムーズに辞めるには、就業規則などを確認して退職日をあらかじめ決めた上で、直属の上司に退職の意向を伝えます。
その後、退職届を提出し、仕事の引継ぎや備品の返却などを行います。
退職金制度がある勤務先であれば、退職金を受け取るための書類提出が必要な場合があります。
退職したくても強く引き止められるなど辞めるのが難しい場合は、労働基準監督署に相談しに行くことをアピールしたり、退職代行業者の利用も検討しましょう。
まとめ
看護師として働く4人に3人は辞めたいと考えたことがあるという現実があります。
看護師として仕事へのモチベーションを保つ方法とともに、人生において何を重視するかを真剣に考えると安易に仕事を辞めることは避けられるでしょう。
さらに、看護師の給料や得られる待遇などを手放すことの是非を現実的に考慮するのも大事です。
看護師自体を辞めるのではなく、新たな職場に転職するという選択肢も検討しましょう。