会計のプロフェッショナルに与えられる「USCPA(米国公認会計士)」。
米国という大国が公認するこの資格は、国内のビジネス資格とは一線を画する専門職のライセンスです。
現代社会のグローバル化に伴い、企業の海外進出や合併・再編といった変革の勢いが強まっており、世界各国でUSCPAのニーズが急増しています。
今回は、USCPAになる方法や仕事内容、試験内容・難易度などを詳しく解説していきます。
USCPA(米国公認会計士)とは?
USCPA(U.S. Certified Public Accountant)とは、会計・税務・財務の専門家である「米国公認会計士」に与えられる資格です。
米国各州が主催・認定を行っている公認会計士資格で、国際ビジネス資格の最高峰に位置付けられている専門資格でもあります。
USCPAの始まりは、米国・ニューヨーク州において「公認会計士制度」が創設された1896年まで遡り、第一回試験が実施された1917年から100年以上もの長い歴史を持っています。
長年の歴史と世界規模の認知度を誇るUSCPAは、世界で最も有名なビジネス資格として君臨しており、国・職種・目的を問わず世界各地でチャレンジされている資格試験なのです。
ビジネスシーンで活躍
USCPAで学習する会計知識は高水準であり、基本から応用まで広い領域を学習できます。
また、国際ビジネスに必要なIT知識・英語を学習するため、語学の勉強だけでは得られない英語力や専門スキルも身に付きます。
公認会計士としての知識だけでなく、経営監査・管理といった他の経営職にも役立つ科目が豊富で、様々なビジネスシーンで活躍できる汎用性の高い資格です。
USCPA(米国公認会計士)になるには?
USCPAになるためには、資格試験に合格した後にライセンスを取得し、AICPA(米国公認会計士協会)に登録する必要があります。
しかし、USCPAの資格を受けるために渡米する必要はありません。
資格主催のAICPAは、世界各地で資格試験を受けられるよう受験地のグローバル化を推進したため、各国でUSCPAの資格試験を受けられるようになりました。
そのため、USCPAは米国認定の資格試験でありながら日本国内でも受験が可能です。
単位修得が必要
USCPAの出願は、大学での会計及びビジネス関連科目の単位を取得していることが条件です。
また、日本を含む米国外の試験会場で受験する場合は、出願時に「全科目合格から3年以内にライセンスを取得する意思があることに同意する」というポリシーにサインする必要があります。
なお、USCPAでは本試験に加え実務経験も必要になりますが、実習内容や取得できるライセンスは州によって異なります。
例えば、グアム・ワシントン州では監査実務はありませんが、その代わり会計監査のライセンスを取得できません。
出願の際には、取得目的・ライセンス・実務試験などを考慮して州を選択するとベストです。
USCPA(米国公認会計士)の仕事内容は?
米国公認会計士の主な仕事は、米国の税法に基づいた法人税の申告・個人所得税の申告などの会計業務です。
試算表や帳簿のチェックといった事務や、税務・経営に関するコンサルティングを行う場合もあります。
海外企業とのパートナーシップ契約を結ぶ企業・監査法人では、USCPAによる会計業務・コンサルティングが必須なのです。
また、海外の子会社や投資先の経営分析に関しても、英文財務諸表を読みとれるUSCPAがその業務を担います。
このように、USCPAは高い会計知識と英語力を活かして、海外企業の橋渡し役として様々な業務に関わり、法人・企業のグローバルな事業展開をサポートするのです。
USCPA(米国公認会計士)の働き先は?
USCPAの働き先は監査法人・税理士法人・会計コンサルティング会社など様々です。
特に税理士法人の国際税務部門などでは、米国の税務・語学に関する専門知識を持つUSCPAの採用ニーズが増加しており、未経験の求人まで出ています。
事実、2021年現在でAICPAに登録している公認会計士は60万人を超えるものの、会計事務所で監査業務に従事しているUSCPAは全体の4割しか確認されていません。
その他の6割は、事業会社や監査法人、官公庁などで会計・財務を中心として幅広いポジションを受け持っており、経営管理やコンサルタントなど様々なビジネス業務に携わっています。
重役になる人も
資格をキャリアアップに活用する例もあり、CFO(最高財務責任者)やCEO(最高経営責任者)などの重要ポストに就く人もいます。
そもそも、USCPAの取得は日本の公認会計士資格よりも容易であることから、会計士だけでなく経理・財務経験者も取得している資格です。
加えて、USCPAの試験科目「監査及び証明業務」は公認会計士だけでなく、経営管理に携わる職業にとっては必須知識と言えます。
このため、USCPAの活躍の場は会計監査だけに限定されないのです。
USCPA(米国公認会計士)の難易度は?
米国の資格制度は取得後も自主的にレベルアップすることを前提としており、日本のように「試験難易度が高すぎて合格自体が困難」という事はありません。
実際、USCPAの試験合格率は高い水準にあり、受験者の合格率は平均50%前後という数字が出ています。
しかし、これはあくまでも世界各国の平均であり、英語の読解力に乏しい日本では平均10%程度という低い数字が出ています。
会計・ビジネス知識を中心に学習してきた人であっても、英語やIT知識といった専門外分野のハードルを超えるのが難しく、結果として国内における合格率が下がっているのです。
英語力やIT知識が重要
USCPAの合格を目指す場合は、まず英語力の向上やIT知識の習得に専念しましょう。
難しい英語文章が出題される頻度は高くないので、英語をしっかりと読めるようになること、会計・経営以外の知識を身につけることが合格の鍵です。
USCPAの試験日は自由に決めることが可能で、同じ科目であれば年4回まで再チャレンジできるので、焦らずに基本知識を身に付けることからスタートしましょう。
USCPA(米国公認会計士)の試験内容は?
USCPA試験はAICPAが問題を一括管理しているため、出願する州によって難易度や合格基準が異なるという事はありません。
従って、本試験であればどの州に出願しても合格に必要な学習時間は同じです。
試験の出題内容は、会計士としての基本知識を問う問題が多く、難易度の高い問題は少ない反面、その出題範囲は非常に広いです。
しかし、USCPAは国内の資格試験とは異なり1科目毎の分割受験が可能なので、1科目ずつ勉強して受験するという長期合格を目指すこともできます。
なお、合格科目実績の有効期限は各科目で18ヶ月間と定められているので、あまり長引かせないように注意しましょう。
実務試験について
先に説明したようにUSCPAには本試験の他に実務試験があり、こちらは州によって内容が異なるので注意が必要です。
例えば、グアム・ワシントン州では監査実務が無い代わりに、会計監査のライセンス取得ができません。
基本的には本試験合格に加えて、米国基準に基づいた一定期間の監査実務経験を行わなければなりませんが、該当するライセンスを取得できるというメリットがあります。
まとめ
USCPAが必要となるのは会計・経営だけではありません。
急速に進むグローバル社会、現代のビジネスパーソンに要求される技能は更に専門化・細分化されていきます。
加えて、各国のグローバル企業が国内でも台頭する中、海外企業と関われる英語力も必要になります。
USCPAの合格は、公認会計士として従事している方だけでなく、その他の職業に就いている人であっても目指すべきと言えるでしょう。