無線を行うには世界共通で資格が必要ですが、その資格も従事する業務や難易度によっていくつもの種類に分かれています。
そこでこちらの記事では、無線通信士の資格にはどのようなものがあるのか、それぞれどのような業務に関わることになるのか見ていきましょう。
また、各試験の受験方法やそれぞれの難易度などについてもご紹介していきます。
無線通信士とは?
区分 | 国家資格 |
---|---|
カテゴリ | 通信 |
受験資格 | 無し |
試験日程 | 毎年1回〜2回 (区分により異なる) |
試験方法 | 筆記試験・実技試験 |
試験会場 | 全国各地 |
受験料 | 5,000円〜20,000円程度 (区分により異なる) |
登録・更新 | 合格後に要登録 |
難易度 | |
おすすめな人 | 学生 社会人 |
無線通信士は無線の通信操作を行う資格で、技術操作を中心とした無線技士とは業務内容が若干異なります。
無線通信士には、総合無線通信士、海上無線通信士、航空無線通信士などの種類があり、さらに3~4つのランクに分かれているものもあります。
取得した資格の種類やランクによって可能な操作が異なりますので、必要に応じて他の種類やさらに上位のランクの資格を目指さなければならないこともあるでしょう。
総合無線通信士
総合無線通信士には1~3級があります。
3級は船舶や陸上に設置された海上関係の無線設備の通信操作に限られますが、2級になると船舶や航空機での操作、さらに1級では陸・海・空において様々な通信操作が可能になります。
ただし、陸上無線に関しては一部制限があるため、総合無線通信士と陸上無線技術士の1級を取得しておけば、全ての無線従事者免許の操作が可能です。
海上無線通信士
海上無線通信士は1~4級があり、海上における安全確保や遭難に関する通信のため、船舶の無線装置を使って通信を行います。
陸上やほかの船舶との通信が主流になり、仕事としてこの資格を活用する場合には総合無線通信士や陸上無線技術士の資格も取得しておくのが望ましいです。
航空無線通信士
航空無線通信士はランクがなく、パイロットや航空管制官など航空関係の無線設備を用いて通信を行います。
なお、自家用航空機の無線局であっても通信操作をするにはこの資格が必要です。
無線通信士を取得するメリットは?
電波に関する幅広い知識が学べる
無線通信士の試験では、単なる通信操作の方法だけでなく電波利用技術に関する基本から専門的な内容までの知識が必要です。
級が上がっていくほどその内容は多岐にわたり、無線操作の時だけでなくIoTやAIなどの電波利用に関しても理解を深めることができます。
情報化社会において、電波に関する知識が保証されている国家資格を持っていることは大きなアドバンテージになるでしょう。
就職でアピールできる
無線通信士は国家資格なので、関連する仕事に従事しているかどうかは関係なく、一生自分の資格としてアピールできます。
上位の資格である第一級総合無線通信士を取得していれば中学校や高校の助教諭として臨時免許を取得することができます。
さらに無線従事者として3年以上実務を行った経験があれば、中学校教諭2種の職業、高等学校教諭1種の工業を取得することも可能です。
もちろん、官公庁や放送局、通信関連の企業、航空会社など無線を必要とする様々な職場への就職を目指す人にとっても有利に働く資格といえるでしょう。
個人での開業も可能
無線通信士の資格を取得して一定の要件を満たした場合、総務大臣の登録を受けて定められた種別の無線局において点検業務を行えるようになります。
そのため、官公庁や企業で通信業務に携わるのではなく、無線局検査の登録検査等事業者として個人で資格を活かした仕事を始めることも可能です。
他の資格試験の際に受験科目の免除が受けられる
電気通信主任技術者など他の国家資格を受験する際に、重複する内容に関しては受験科目の免除を受けられることがあります。
複数の資格を目指している時に効率よく学習できるでしょう。
無線通信士の取得方法は?
無線通信士の資格試験は特に受験資格が定められていないため、年齢や学歴に関係なく誰でも挑戦できます。
ただし、専門的な知識が必要なので、大学や短大、専門学校などで機械工学、電気工学、情報学、通信工学などを学んだ人や関連する官公庁、企業等で働いている人の受験がほとんどです。
試験は毎年1回、2~3月に開催されるため、早目にインターネットで申請手続きを行いましょう。
試験内容はどの資格を目指すかにもよりますが、無線工学や法規、実技の他に地理や英語などが必要になるものもあります。
試験に合格した後は、総務省総合通信局あてに無線従事者免許申請書を提出して、正式に資格取得となります。
無線通信士の難易度は?
無線通信士の難易度は、種類によってかなり差が見られます。
また、ランクが高くなるほど合格率は低いです。
総合無線通信士
総合無線通信士は幅広い無線設備を扱えるようになる試験ですので、3つの無線通信士の資格の中でも最も難易度が高くなっています。
3級から無線工学や法規、実技に加えて英語が試験科目にあり、1~2級になると地理が加わってさらに専門性の高い内容に関する出題があります。
合格率は3級でも約4%、2級で約3%、1級が約7%といずれも低い状況です。
一度で合格を目指すのは難しいため、数年かけて挑戦するくらいの意思の強さが必要となるでしょう。
海上無線通信士
海上無線通信士は1~4級に分かれていますが、4級の試験では無線工学と法規のみなので、比較的学習しやすいです。
3級になると英語や実技が増え、1~2級では無線工学の内容が専門的になるため、既に他の資格を取得している人でも新たに学習する必要があるでしょう。
合格率は4級が約55%、3級が約36%、2級が約20%、1級が約37%とランクが上がるとやや難易度が高くなっています。
しかし、全体的に合格率は高めで、計画的に学習すれば資格取得の可能性は十分に見込めます。
4級の資格では国内の通信操作しかできませんので、国際通信を視野に入れている場合は3級以上を目指しましょう。
航空無線通信士
航空無線通信士はランクの指定が無く、試験科目は無線工学と法規、英語、実技です。
難易度はそれほど高いものではなく、合格率はおよそ42%です。
無線通信士はこんな人におすすめ!
無線通信士は、無線従事者の中でも特に通信操作を行いたい人におすすめです。
無線に興味がある人、学生時代に機械工学や通信工学などを学んでいる人も、なじみがある内容が試験に出されるので挑戦してみる価値があるでしょう。
既に無線従事者として働いている人が、さらなるスキルアップや可能性を広げるために高いランクの資格やほかの種類の資格に挑戦するのもおすすめです。
無線に携わる人は積極的に挑戦を
無線通信士は受験資格がないので挑戦しやすくはありますが、資格の種類によって難易度にはかなりの開きがみられます。
また、一口に無線通信士といっても、その種類やできる内容はかなり異なりますので、受験の際には注意しましょう。
無線に関する知識が身につくため、通信業務に関わる人は積極的に挑戦するのがおすすめです。