国家資格は国が定めた試験に合格すると取得でき、持っているだけでさまざまなメリットを得ることができます。
多くの国家資格は専門性の高い仕事に就くことを前提としているため、高難易度であることが一般的です。
この記事では、施工管理技士のうちの1つである土木施工管理技士と土木施工管理技術検定について解説していきます。
土木施工管理技士とは?
土木施工管理技士とは、6種類ある施工管理技士の国家資格のうちの1つです。
土木工事の計画や工程管理、品質管理や予算管理などの監督業務を行います。
橋や道路などのインフラに関する工事や公共工事、自然災害からの復旧工事も土木施工管理技士が担当することがあり、仕事内容は多岐にわたります。
土木工事は計画通りに進まないことも多く、急な計画変更や事故などが起こった場合、柔軟に対応する必要があるため、責任感やリーダーシップが求められる職業です。
勉強すればだれでも受験できる資格ではなく、一定期間以上の実務経験を有することが条件となっています。
土木施工管理技士になるには?
土木施工管理技士になるためには国家資格試験の合格が必須です。
試験は2級土木施工管理技術検定と1級土木施工管理技術検定があり、2級に合格すると主任技術者、1級に合格すると監理技術者になれます。
受験資格となる実務経験は学歴によって変わりますが、ほとんどの場合が1年以上の実務経験が必要です。
基本的に指定学科出身者は実務経験が短くなる傾向にあり、早くから土木施工管理技士を目指している人の中には、中学生のころから指定学科のある高校を目指している人もいます。
実務経験が必要なことから、まずは就職して、それから資格取得を目指すのが一般的なようです。
土木施工管理技士の仕事内容は?
基本的な業務を除き、1級と2級の土木施工管理技士では仕事内容が異なります。
ここでは、土木施工管理技士の基本的な仕事内容と1級、2級の仕事内容の違いを紹介していきます。
基本的な仕事内容
道路や橋、トンネルなど土木工事全般の施工設計から現場の作業工程管理、コスト管理や品質管理などが主な仕事内容となります。
また、現場での安全管理も仕事の1つで、土木工事の現場監督と言えるでしょう。
規定に沿って足場が組み立てられているか確認したり、打ち合わせ通りに物事が進んでいるか確認したりします。
工事によっては住宅密集地で工事が行われるため、騒音や振動が発生してしまうことを周辺住民への説明を行うもあります。
2級
2級土木施工管理技士は「主任技術者」となり、土木、鋼構造物塗装、薬液注入など、各専門分野の技術者として施工管理を行います。
国土交通省が定めた監理技術者制度運用マニュアルによれば、元受けから請け負いした金額が4千万円以下の土木工事現場には、主任技術者の配置が必要になると記載されています。
なお、特定の実務経験が10年以上ある場合は、2級土木施工管理技士を取得していなくても主任技術者として施工管理を行うことが可能です。
1級
1級土木施工管理技士は「主任技術者」に加え「監理技術者」となります。
監理技術者は現場全体の指揮を取ることが可能で、現場では主任技術者と監理技術者の両方の役割を兼任していることがほとんどです。
上記の通り、請負金額が4千万円以下の現場では主任技術者が必要なことに対し、4千万円以上の現場では主任技術者に代えて監理技術者を必ず置く必要があります。
土木施工管理技士の働き先は?
土木工事の現場では土木施工管理技士が必要になるため、多くの企業で募集されています。
ここからは土木施工管理技士の主な働き先を紹介します。
大手ゼネコン
土木施工管理技士として比較的給料が高く、仕事内容の幅が広いことが特徴です。
多くの場合は新卒で入社していますが、どの現場でも重宝されるため経験者も募集していることが一般的です。
特に工事費4千万円以上の大規模な工事が多い大手ゼネコンでは、1級土木施工管理技士の採用が多い傾向にあります。
ディベロッパー
ディベロッパーは不動産開発が主な事業となります。
ゼネコンが工事を請け負う会社なら、ディベロッパーは工事を企画する会社です。
ディベロッパーに入社すると、土木工事の企画においてその能力を発揮できるでしょう。
道路会社
日常生活に必要不可欠な道路を補修したり、作ったりする会社で活躍する土木施工管理技師もいます。
この場合、アスファルトやコンクリート、ブロックなど道路の種類は問いません。
道路は消耗品で必ず補修が必要なため仕事が途切れることは滅多にないので、土木施工管理技士から人気の職業なのです。
また、舗装施工管理技術者など他の資格も取得している人は採用されやすく、待遇が良くなるでしょう。
官公庁
官公庁では土木工事を発注する側として働くことが可能です。
ゼネコンやディベロッパーなどに比べ給料は安い反面、安定があり人気があります。
ただし、採用人数がごくわずかなため、一度採用者が決まるとしばらく募集されないことがほとんどです。
土木施工管理技士の難易度は?
2級
受験者数と合格率は年々上昇傾向にあり、学科試験では近年は合格率50%以上をキープしています。
実地試験は10年ほど前まで20%台しかなかったものの、それ以降は30%から40%を推移している状況です。
1級
受験者数は年々減少傾向にありますが、ここ数年筆記試験の合格率は50%半ばから60%半ばを行き来しています。
最高合格率は平成20年の70.5%で、70%を超えたのはこの年のみです。
学科試験では30%代半ばで安定していましたが、令和元年には合格率で45.3%を記録しました。
土木施工管理技士の試験内容は?
土木施工管理技士の試験では、学科試験と実地試験が行われます。
2級と1級それぞれどんな試験内容なのか見ていきましょう。
2級
土木、鋼構造物塗装、薬液注入の3つに分かれており、試験時間はどれも学科2時間10分(択一式)、実地2時間(記述式)となっています。
3つとも試験日時が違うため、複数受験する方は間違えないよう注意しましょう。
1級
学科試験は午前午後に分かれており、午前が2時間30分、午後が2時間です。
実地試験は2時間45分となっており、試験時間が長いだけでなく、2級と比べて出題範囲も広いため長期的な計画を立てて勉強していく必要があります。
まとめ
土木施工管理技士は現場を任される仕事です。
特に、1級土木施工管理技士が携わる工事は規模が大きく少しのミスも許されないことも多いでしょう。
ちょっとしたズレが生じるだけで工程や企画書を見直す必要があるほど、緻密な計画になっており高い責任能力が問われます。
しかし、携わった工事が完成したときには大変なやりがいを感じられる仕事でもあります。
取得するまでの道のりは簡単ではありませんが、その分のリターンは十分にある資格と言えるでしょう。