労働者の健康被害や労働災害を防ぐために働くのが衛生管理者で、一定規模以上の事業所に設置されます。
その中でも、専門知識を有し、有毒ガスや粉塵などが発生する有害業務を行う作業所に設置されるのが衛生工学衛生管理者です。
具体的にどのような場所に配置されるのか、資格を取得するにはどうすればいいのかなど、詳しく解説していきます。
衛生工学衛生管理者とは?
区分 | 国家資格 |
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カテゴリ | 工場・建設 |
受験資格 | ・大学や高専等で工学または理学のカリキュラムを履修 ・職業能力開発総合大学校にて長期指導員訓練を修了 ・第1種衛生管理者免許に合格 ・指定大学で労働衛生に関する科目を履修 ・労働衛生コンサルタント試験に合格 ・作業環境測定士となる資格がある のいずれか |
試験日程 | 年に数回 |
試験方法 | 講座を修了後に筆記試験 |
試験会場 | 東京・大阪 |
受験料 | 約10,000〜120,000円 (講座の日数により異なる) |
登録・更新 | 合格後に要登録 |
難易度 | |
おすすめな人 | 社会人 |
労働安全衛生法という法律で、一定以上の規模を持つ職場は、労働者の健康被害や労働災害を防止するために衛生管理者を置くように定められています。
職場が責任を持つことで、労働者は安心、安全に働くことができるのです。
単に危険な作業方法や箇所を正すだけではなく、労働者の衛生意識を高めたり、労働災害が起こったときはその原因や対策について動くことも衛生管理者の仕事になります。
この衛生管理者は誰でもなれる訳ではなく、衛生管理のための免許が必要になります。
免許にはいくつか種類があり、そのうちの1つが衛生工学衛生管理者免許です。
特に有害業務を行う工場で需要がある、最も幅広い業務を行うことができる資格です。
衛生管理の資格は3種類
衛生管理免許は国家資格であり、
- 衛生工学衛生管理者
- 第1種衛生管理者
- 第2種衛生管理者
の3種類に分かれています。
それぞれの違いは活躍できる場所です。
第2種衛生管理者免許のみを所持する人は、金融や保険、小売業など有害業務とは関係ない場所でのみ衛生管理を行うことができます。
これに対し、第1種衛生管理者と衛生工学衛生管理者は全業種に対応することが可能です。
また、一定の有害業務を行う事業所は、必ず1人は衛生工学衛生管理者を選任しなければなりません。
50人以上の事業所は必置
衛生管理者の設置人数は、事業所ごとの規模や労働者数によって決まります。
「事業所ごと」とは同じ場所で関連する作業を行う場所を指す単位で、支店、店舗、工場ごとに1事業所と数えます。
企業全体で何人、という基準ではないので注意が必要です。
作業に従事する労働者が常時50~200人の事業所なら、衛生管理者は1人設置されます。
201~500人なら2人、501~1000人なら3人必要です。
衛生工学衛生管理者の専任が義務付けられているのは、500人以上労働者がいる事業所で、有害業務に常時30人以上が従事している場合です。
有害業務とは?
ここでいう有害業務とは、労働基準法によって定められた業務のことを指します。
具体的には
- ラジウム放射線やX線などの有害放射線を浴びる可能性がある業務
- 鉛や水銀、クロムなどの有害粉塵や蒸気、ガスが発散する業務
- 多量の高熱物質を扱う業務
- 著しい暑熱状況下、異常気圧下での業務
- 土石や獣毛などの塵埃や粉末が著しく飛散する状況下での業務
などがそれに当たります。
こうした事業所では、衛生工学衛生管理者は工学知識を活かして労働環境を改善したり、有害なガスや粉塵を抑制するための対策を講じるなどして、事業所全体を健全に保つように動きます。
衛生工学衛生管理者を取得するメリットは?
衛生工学衛生管理者の資格を取得するメリットは、第一に自らの人財価値を高めることができるという点にあります。
一定の条件を持つ事業所では、衛生工学衛生管理者の設置が義務付けられているため、特に規模が大きい企業において重宝されやすくなり、転職市場でも高い評価を得ることができるでしょう。
第2種衛生管理者は有害業務に携わる業種では働くことができませんが、衛生工学衛生管理者であれば全ての業務をカバーすることができるため、職場の選択肢が増えることもメリットです。
また、資格手当が付与される企業であれば、給料アップも見込むことができます。
衛生工学衛生管理者を取得するには?
衛生工学衛生管理者の免許を取得するためには、厚生労働大臣が定める講習を受け、最終日に行われる筆記試験に合格する必要があります。
この講習を受けるためには条件が設定されており、
- 大学又は高等専門学校において、工学は又理学に関する課程を修めて卒業
- 工学又は理学の学士の学位を授与されている、あるいはそれと同等の学力を要している
ことが必要です。
この条件を満たしている場合、5日間の講習を受けることになります。
衛生工学衛生管理者の講習には他にも4日コースと2日コースが設定されています。
4日コース
- 第1種衛生管理者免許試験に合格している(ただし保健師、薬剤師の資格による免許取得者は対象外)
- 指定大学で保健衛生に関する学科を専攻して卒業し、労働衛生に関する講座か科目を履修している
- 労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)に合格している
ことが条件となります。
2日コース
- 作業環境測定士資格を持っている
- 労働衛生コンサルタント試験(労働衛生工学)に合格している
ことなどが条件になります。
この他にも、持っている資格やその組み合わせによって一部科目が免除される条件があるので、よく確認することが大切です。
衛生工学衛生管理者の難易度は?
衛生工学衛生管理者試験の受験者数や合格率は共に非公開です。
講座を受けるための条件が設定されており、かつ講習を受けてその内容に沿った筆記試験に臨むため、難易度はそれほど高くないと言われています。
また、取得している資格によって科目が免除されるため、それによっても難易度に違いが出ます。
衛生工学衛生管理者を活かせる業界は?
いわゆる作業現場でのニーズが高い資格です。
具体的な職種としては、林業、鉱業、建設業、自動車整備業、機械修理業などが挙げられます。
やはり有害作業が伴う工場の求人が多くなっています。
常時問題が起こりそれに対処する、という訳ではありませんが、環境や設備を適時見直し、働く人を健康被害や危険から未然に守ることが衛生工学衛生管理者の役割となります。
衛生工学衛生管理者はこんな人におすすめ!
専門知識が必要になり、講座を受けるための条件が定められていることから、
- 林業や鉱業、製造業といった仕事に就きたいと思っている人
- 既にそういった業種で働いていてキャリアアップを目指している人
におすすめの資格です。
ある程度の大きさの事業所では衛生工学衛生管理者の設置が義務付けられているため、資格を持っていると有利になる可能性が高くなります。
職場の選択肢も増えるでしょう。
衛生工学衛生管理者は従業員が安心して仕事ができる環境や体制を作り上げて行くことが仕事です。
現場で働いている人から広く情報を聞き取ったり改善策を積極的に出して行くためには、やはり他人とのコミュニケーションが苦にならないことが必要条件となります。
労働者の健康状態を把握してアドバイスを行ったり、作業現場を巡回し労働者の健康を害するような作業内容や設備がないか確認することも仕事です。
指示を待つのではなく自分から責任を持って積極的に仕事に取り組んでいくことも必要になります。
労働者の作業環境を整えるのが使命
衛生管理者の中でも、衛生工学衛生管理者は全ての業種をカバーすることができる仕事です。
特に有害作業を行う工場で、労働者を健康被害や危険から守ることが重要な役割となります。
一定規模以上の事業所では設置が義務付けられているため、需要も高いと言えるでしょう。
林業や鉱業などへ就職や転職を考えているなら、取得を目指すのもおすすめです。