理系の知識を活かせる仕事は多岐に及びますが、特に科学技術の分野で注目を集めているのが「技術士」という資格です。
現代社会において技術士の資格保有者が活躍するシーンは多く、業界によっては有資格者の需要が高まっています。
技術系で手に職を付けたい人が目標とするにも適した資格と言えるでしょう。
今回はそんな技術士について掘り下げて紹介します。
技術士とは?
区分 | 国家資格 |
---|---|
カテゴリ | 技術 |
受験資格 | 実務経験(条件により年数は異なる) |
試験日程 | 年1回 |
試験方法 | 筆記試験・口答試験 |
試験会場 | 全国主要都市 |
受験料 | 14,000円 |
登録・更新 | 合格後に要登録 |
難易度 | |
おすすめな人 | 社会人 |
技術士とは、科学技術分野において高度な知識を身に付け、効果的に運用するためのスキル及び実務経験を証明できる国家資格です。
所管の省庁は文部科学省となっており、有資格者は高技術者倫理によって社会に公益性をもたらす人材として認定されます。
科学技術分野について幅広い人材育成を促すべく、技術士資格には21の部門が設けられておりそれぞれで専門の試験が用意されています。
自分が希望する業界や職種にマッチする分野の試験を受ける必要があります。
技術士を取得するメリットは?
専門性の高い仕事に就ける
技術士は数ある資格の中でも信頼性が高い国家資格に分類されているため、有資格者は各業界からも高く評価される傾向があります。
在職中に取得すればさらに高度な仕事を任されるようになり、昇給・昇格にも良い影響が期待できると言って良いでしょう。
また、技術者資格は転職にも有利に働くケースが多いので、将来的なキャリアアップを検討している人にもおすすめです。
特に建設業界では技術士資格の評価が高く、地質調査業者や建設コンサルタントといった選択肢も視野に入ります。
人脈作りにも効果的
技術士の有資格者は日本技術士会に所属できるようになるため、ここを人脈作りの起点として活用する人も少なくありません。
日本技術士会は2021年に設立70周年を迎えた歴史の長い組織であり、各業界から多くの技術士が集っています。
同業種のみならず異業種間の交流も盛んに行われているので、自力では開拓が難しい分野への人脈も効率的に広げられるでしょう。
技術士会主催のセミナーを活用して、自分の知識やスキルの底上げを図るのもおすすめです。
公共事業では入札に有利
技術士が働く現場では工事や建設などの公共事業が絡むことも多いです。
技術士資格はこうした公共事業の入札において有利に働くという点も魅力的なポイントとなります。
公共事業への入札は企業が行うものですが、所属している建設系技術士1人につき5点が審査段階で加算されるのです。
これはどちらかと言えば技術士を雇う側である法人としてのメリットと言えますが、建設業界で技術士が重宝される大きな理由となっています。
仕事のモチベーションが上がる
技術士という資格は高度な知識と運用スキルが認められる国家資格であり、取得すれば周囲からの注目度も上がります。
資格に相応しい仕事ぶりを求められるようになるため、仕事に対するモチベーションを向上させるのにも一役買ってくれるでしょう。
科学技術の世界は日進月歩であり、一度身に付けた知識やスキルも永久的に通用するとは限りません。
所属業界における最新の動向や技術開発へ常に注意を払い、自身の知識をアップデートし続けていく心構えを持っておきましょう。
技術士の取得方法は?
技術士の資格試験は1次と2次の2段階制となっており、2次試験に進めるのは1次試験の通過者のみです。
ただし、指定の大学などにおいて日本技術者教育認定機構(JABEE)が認定する課程を修了している場合には、1次試験は免除となります。
また、総合技術監理部門では1次試験が存在せず2次試験のみです。
受験資格に年齢・学歴・国籍などの制限はないため、幅広い人に門戸が開かれていると言えるでしょう。
なお、2次試験は1次試験合格の直後に行われるとは限らないという点に注意が必要です。
技術士資格を取得するためには、該当分野における修習技術者としての実務経験が必要になります。
指導者なしの場合は7年以上、監督者および指導者の下であれば4年以上の実務経験が求められるのです。
実務経験を積む期間は受験者によってケースバイケースであり、1次試験通過後から実務を開始する場合もあります。
実務経験の確認が取れ次第、2次試験の受験資格が付与されるのです。
技術士の難易度は?
時期 | 受験者数 | 合格率 |
---|---|---|
2022年 | 22,489人 | 11.7% |
2021年 | 22,903人 | 11.6% |
2020年 | 20,365人 | 11.9% |
2019年 | 24,326人 | 11.6% |
2018年 | 25,914人 | 9.1% |
技術士資格の分野は21部門に及び、それぞれで試験内容が異なります。
そのため、各分野での合格率にもバラつきがあるので注意しておきましょう。
令和元年の試験結果によると、1次試験で比較的合格率の高い経営工学部門では合格率76.7%となっています。
なお、受験者の多い建設部門の1次試験合格率は47.6%です。
ただし、1次試験の難易度や合格率がそのまま2次試験の合格率に反映されるとは限りません。
例えば、経営工学部門における2次試験合格率は14.0%ですが、1次試験合格率が68.8%と高めの情報工学部門の2次試験合格率は7.4%と難関レベルとなっています。
人気の建設部門での2次試験合格率は9.4%でした。
1次試験全体の合格率は約40%、2次試験を突破して技術士資格を取得する人は例年10%前後です。
一般的に技術士資格を取得するまでに必要となる学習時間は、のべ1100~2000時間程度とされています。
技術士を活かせる業界は?
技術士は取得する部門によって活躍できる業界が異なりますが、概ね建設関連の業種へ就職する人が多い傾向が見られます。
具体的には建設会社の開発・研究部門や建設コンサルタント企業などが定番です。
技術士の資格は公共事業でも活かすことができるので、官公庁へ進む人も少なくありません。
また、資格を取得した段階では高度な知識を有しているため独立して事業主となる選択肢もアリでしょう。
発展途上国に対して技術指導を行うこともできるので、国際的な支援活動を行う法人に就職するケースもあります。
技術士はこんな人におすすめ!
技術士は建設業界において大きな影響力を持つ資格なので、将来的に建設業界への就職を検討している人におすすめです。
もちろん、建設コンサルタントとして独立開業を目指す人にとっても大きな効力が期待できます。
公共事業や国際支援などスケールの多い仕事に携われるケースもあるので、人の役に立っていると実感しやすい仕事がしたい人にも向いているでしょう。
なお、技術士は取得難易度の高さや信頼度に比べて知名度がやや低めです。
したがって、有資格者もそれほど多くなく、取得を目指すことで転職活動のライバルに差を付けられるでしょう。
技術者の資格取得には実務経験が必要になることから比較的長期間に亘って学習を続けていく必要があります。
そのため、コツコツと地道に勉強することを苦に思わない人におすすめな資格であるとも言えるでしょう。
将来的に官公庁への就職を視野に入れている人にとっても、大きな武器となります。
まとめ
技術士は1次・2次試験に加えて実務経験も求められる格式高い国家資格です。
建設業界では有資格者の存在感が際立っているため、取得できれば自身のキャリアプランの幅が大きく広がると言えるでしょう。
建設部門以外でも科学技術分野を広範囲にわたってカバーしているので、興味関心のある部門で受験するのもおすすめです。
今後も発展が期待されている科学技術分野で活躍するために、技術士の取得を目指してみましょう。