義肢装具士は、体の一部の機能を失った人に様々な可能性を提供することのできる重要な仕事です。
しかし、義肢装具士という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどのようなことをするのか、どこで働くのかを理解している人はそれほど多くはありません。
そこで今回は、義肢装具士の資格取得方法やスキルを活かせる働き先などを見ていきます。
義肢装具士とは?
区分 | 国家資格 |
---|---|
カテゴリ | 医療 |
受験資格 | 養成所等で専門科目を履修 |
試験日程 | 毎年2月 |
試験方法 | 筆記試験 |
試験会場 | 東京都 |
受験料 | 59,800円 |
登録・更新 | 合格後に要登録 |
難易度 | |
おすすめな人 | 学生 社会人 |
義肢装具士とは、手足の役割を担う義肢やコルセット、義眼などの体をサポートする装具を作成し、使用者の身体能力やライフスタイルに合わせて適合させる専門職です。
医療専門職の中では比較的成り立ちが新しく、1987年に国家資格として誕生しました。
パラリンピックやパラスポーツなど、日常生活だけでなくより高みを目指す人のサポートも行うなど、幅広い需要があります。
技術力が必須
義肢装具士の仕事は、患者さん一人ひとりと向き合うだけでなく、医師や看護師、理学療法士、作業療法士といった医療専門職との連携も重要です。
具体的にはまず医師の処方を受けた患者さんと直接対話をしながら、医師の指示に従って採寸や採型を行います。
患者さんの体の状態を確認し、該当部位を採寸した後に作成した型を基に、義肢や装具の製作に取り掛かります。
患者さんのライフスタイルによって必要とされる機能は異なりますし、そもそも義肢はオーダーメイドが基本なので、制作には豊富な知識や柔軟な対応力、イメージ通りに仕上げる技術力が必要です。
完成した義肢や装具は患者さんに装着してもらい、痛みや強い違和感を訴えた場合は微調整を行なって最終的にきちんとフィットしたものを納品します。
義肢装具士の取得方法は?
義肢装具士になるためには国家試験に合格しなければなりません。
ただ、その試験にも受験資格が必要なため、自分に合った方法でまず受験資格の取得を目指すところから始めます。
義肢装具士国家試験の受験資格はいくつかあり、いずれかを満たせば受験可能です。
- 学校教育法の規定する大学入学資格を満たしていて、かつ指定の義肢装具士養成所で3年以上学んでいる
- 大学・高等専門学校・指定の学校・養成所で1年以上学んで心理学や数学等の指定単位を取得しており、かつ指定の義肢装具士養成所において2年以上学んでいる
- 職業能力開発促進法に規定された義肢及び装具の製作に係る技能検定に合格しており、指定の養成所で1年以上学んでいる
一般的なルートとしては、高校卒業後に養成校で3年以上学ぶか、大学や短大、専門学校を卒業後に義肢装具士養成校に通うか、海外で義肢装具士養成所に通ったり相応の免許を取得したりして厚生労働大臣の認定を受ける方法のいずれかから選ぶことになります。
義肢装具士の難易度は?
時期 | 受験者数 | 合格率 |
---|---|---|
2022年 | 200人 | 81.0% |
2021年 | 227人 | 72.7% |
2020年 | 208人 | 78.8% |
2019年 | 263人 | 89.4% |
2018年 | 232人 | 85.3% |
義肢装具士の国家資格試験では、そもそも受験資格の段階で未経験者がふるい落とされているため、受験生はいずれも豊富な知識や経験を有しています。
そのため、合格率は80%前後と非常に高くなっていますが、決して難易度の低い試験ではありません。
何年も専門的な学問を修めていても2割近くは不合格になっていることを考えると、真剣に試験に取り組む必要があると言えるでしょう。
合格率は低下傾向
また、国家資格ということで今後義肢装具士を目指す人が増えてきた場合、試験の難易度が上がる可能性もあります。
実際、ここ何年か85~90%前後の合格率を保っていましたが、2020年には80%を下回り、さらに2021年には75%を切る結果になっています。
受験生は全国で250人程度とそれほど多くはありませんが、年々合格率が下がっていることからも試験の難易度が上がってきていることが分かります。
養成所等で学んだことはきちんと理解して自分のものにしつつ、受験を意識して全体的な復習や新しいことへの学びも積極的に行いましょう。
義肢装具士を活かせる働き先は?
義肢装具士は特殊技能のため、働く場所はかなり限られています。
医療の現場と密接にかかわることは多いものの、医療機関に直接勤務するのではなく、民間の義肢装具製作所で働いている人が大半です。
ただし、義肢や装具の需要が多い大規模なリハビリテーションセンターや病院などでは義肢装具士が在籍していることもあります。
他に、義肢装具士の養成所や職業訓練校などで教師として働いている人もいます。
製作所
義肢装具士の主な就職先である義肢装具製作所は、取得した技能を本来の形で活かすことができる場所です。
製作所が契約・連携している医療機関からの依頼を受けて、病院に訪問して患者さんと面談し、カウンセリングや採寸を経て義肢装具を製作するというのが主な業務内容です。
中には、義肢装具が完成してからも患者さんが使いこなせるようになるまでリハビリをサポートすることもあります。
義肢装具製作所は10~20人の少人数体制のところが多く、1人の患者さんを1人の義肢装具士が担当して全ての業務を行うことがほとんどです。
一方で、大規模なところになると分業制になることも珍しくありません。
リハビリ施設
また、リハビリテーション施設では義肢装具の製作というよりも、義肢や装具を使用する患者さんのリハビリや微調整を行う作業が中心の職場です。
リハビリに関しては理学療法士や作業療法士と協力して行いますが、義肢装具士が常駐していることでリハビリ中に感じた違和感や痛みをすぐに改善できる点が大きなメリットです。
そして、義肢や装具を必要とすることが多い整形外科や形成外科に常駐する場合は、必要に応じて院内の患者さんのために義肢装具の製作や修理、リハビリなどを行います。
通常は外注することが多いですが、義肢装具士が在籍していることで細かいサポートや迅速な製作が可能です。
義肢装具士はこんな人におすすめ!
義肢装具士は、体の一部や機能を失って目標や生きがいを見失っている人に、新たに希望ややる気を与える重要な職業です。
そのため、困っている人を助けたいという気持ちが強い人はやりがいを持って働くことができるでしょう。
また、メインはオーダーメイドの義肢装具の製作ですので、物作りが好きな人にも向いています。
より便利なものを作りたい、アスリートのように特殊な機能を必要とする人を助けたいというときに義肢装具は大きな役割を果たしますので、創意工夫を仕事に活かしたい人にもおすすめです。
やりがいがあり、需要も高い重要な仕事
義肢装具士は専門的な知識を必要とする国家資格ではあるものの、地道に学習していけば取得することも不可能ではありません。
むしろ、資格を取得してからどのようにその知識やスキルを役立てていくのかは個人によって異なりますので、自分なりの目標を見つけることが大切です。
多くの人の助けになり得る職業ですので、ぜひ目指してみましょう。