現在日本で大きな問題になっていることの一つは、働きたい母親が子供を保育所に預ける事ができない「待機児童問題」です。
この原因の一つになっているのは、保育士の人材不足です。
そのため、保育士不足が解消されないと待機児童問題は解決せず、本来働ける母親が働けない、という悪循環が起こってしまいます。
ここでは保育士の人材不足の現状と原因や改善傾向について説明し、保育士不足にどのような対策が必要かを解説します。
なぜ保育士が人材不足と言われるのか?
保育の需要は増えているが、就職を希望する人が少ない
日本の法律では、子供の安全を確保するために、年齢ごとの子供の人数に応じて保育士を何名配置するかという基準が厳しく定められています。
認可保育園だけでなく施設の種類ごとに基準があり、自治体が定めた独自の基準もあります。
現在、保育の需要は増え続けており、基準に従って必要とされる保育士の数は厚生労働省の調査によると平成29年で約46万人となっています。
一方で、保育士の離職率を考慮して推計した現在就業中の保育士の数は約38.6万人ほどです。
現状では毎年7.4万人の保育士が不足していることになります。
離職してしまう人が多く、復職を希望する人が少ない
そのほかにも、保育士養成施設で保育士資格を取得した人の半数が保育園に就職していません。
また保育士資格を持っていても保育園への就職を希望しない求職者のうち、半数以上が保育士としての勤務年数5年未満となっています。
せっかく保育士を希望して養成施設を卒業しても半数が保育園に就職せず、保育士として就職しても5年以内に離職してしまう人が多いという現状です。
さらに、ハローワーク求職者の免許・資格の保有状況を調べると、保育士の資格を持っている人の半数近くが、保育園への再就職を希望していないという結果もあります。
募集は増えているが、希望者が少ない
保育士不足の要因は、『募集が少ないのではなく希望者が少ないこと』が理由であり、さらに『早期離職が多く復職を希望しない人が多い』という現状が浮かび上がってきます。
保育士のなり手が少なく、就職しても安定して働けないという現状は、結果的に待機児童問題にも大きな影響を与えています。
その原因はいったいどこにあるのでしょうか?
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保育士の人材不足が起きる原因は?
仕事内容によるプレッシャー
平成25年に厚労省が保育士資格を持つハローワーク求職者に行なった調査によると、保育士としての就業を希望しない理由は、「責任の重さ・事故への不安」が約4割を占め、「就業時間が合わない」「ブランクがあることへの不安」という理由が続きます。
この結果からは、保育士の仕事は非常に責任が重く、保育士には常に子供を安全に保育することへの強いプレッシャーがあることがわかります。
職場の環境による不満
一方、同じ調査での職場の環境改善に関わる項目の質問では「賃金が希望に合わない」が半数近くを占めています。
そして「自身の健康・体力への不安」「休暇が少ない・取りにくい」という理由が続きます。
労働環境が改善されると就業を希望する人は多い
しかし、これらの環境が改善された場合には6割以上が保育士の就業を希望するというアンケートの結果もでました。
つまり、保育士の仕事の責任に見合う賃金が確保され、就業時間や休みに関する環境が整えば、保育士を希望する人は増えていくということが考えられます。
また、一度保育士を離れた人にも、家庭の状況に応じた就業時間の調整や、再就職へのフォローアップを行うことができれば、保育士に戻りたいという人が増えていく可能性があります。
国や行政の改善傾向について
保育士確保プラン
国や行政もこの状況に危機感を感じ、対策を打ち始めています。
厚生労働省は平成27年から「保育士確保プラン」を打ち出し、「人材育成」「職場の環境改善」「就業継続支援・再就職支援」などを目指し7点の施策を行いました。
これによって、「保育士試験の年2回実施」「賃金アップ(平成29年度から月6000円程度)や手当の付与」「再就職のための研修や求職サポート」などが実現しています。
保育士確保集中取り組みキャンペーン
さらに平成29年度からは「保育士確保集中取り組みキャンペーン」でさらに取り組みを強化し、2020年末までに約32万人の保育の受け皿を確保する目標を立てて、待機児童解消をめざしています。
「保育士確保プラン」と今回のキャンペーンにより、民間で働く保育士の給料を合計約4万円アップし、経験に応じた給与改善も行いました。
そのほかの改善プランについて
また、離職者のためには研修の実施のほか、就職準備金を40万円まで国が貸し付けたり、未就学児がいる人への保育料貸付という制度も作られました。
これらは2年の勤務で返済の免除になるため、職場復帰とともに長く働き続けることも促しています。
これらの施策でもまだ保育士不足は解消されておらず、保育士の人数は必要な水準には達していませんが、国が対策に力を入れることで、保育士の待遇は徐々に改善されてきているといえます。
保育園や施設側の改善傾向について
現場でも改善の必要性が認知されている
国だけでなく、保育園や施設でも様々な改善が必要です。
民間の調査で保育施設に「保育士の採用が難しい理由」を訪ねてみると、国の調査と同じように「賃金」「勤務時間」についての問題がトップを占めるものの、それ以外に「人間関係の難しさ」「保護者対応の大変さ」という新たな問題点も浮かんできました。
また、モチベーションが続かない、人事評価制度がないということも挙げられていました。
人間関係の改善について
これらは保育園という職場環境ならではの問題ともいえます。
人間関係の難しさという点では、保育園は女性の多い職場で、園単位やクラス単位という少人数で働くことになるため、どうしても閉鎖的になりがちな一面があります。
職場でのいじめなどが起こっても外からは見えにくく、当事者も外部に相談しにくい環境です。
そのため、保育士同士の信頼関係やなんでも話せる雰囲気づくりなど、きめ細やかな職場づくりが施設側に求められます。
保護者との対応について
また、保護者とのコミュニケーションも保育士の重要な仕事ですが、本来の仕事を超えるような要求をする保護者や、クレームの多い保護者に対して一人の保育士で対応するのには無理があると考えられます。
そのため、相談機関に頼ったり、一人の保育士が抱えることのないような対策が必要になってきます。
そのほか、経験に応じた適切なキャリアアップや保育士の頑張りを適切に評価する指標なども必要でしょう。
保育園側でも今後の改善傾向あり
保育施設も独自の給料アップや多くの課題を少しずつ解消しているところもあります。
そのことによって採用実績が上がり、人材不足から脱している保育園も少しずつ増えているようです。
保育士不足にはハードとソフト両面からの対策が必要
保育士不足の問題をみていくと、賃金アップや労働環境の整備、再就職支援といった国が主導しなくてはいけないハード面とともに、保育士の精神的な負担や人間関係などの悩みを解消するためのソフト面の対策も行っていかなくてはいけないことがわかります。
行政も施設も力を合わせてハードとソフト両面から対策を行うことで、保育士不足解消、待機児童解消につながっていくのではないかと期待されます。
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