これから介護の職場で働こうと考えた時に多くの人が気になるのは、介護に関わる資格を取った方が良いかどうかという点ではないでしょうか。
介護の現場で長く働こうと考えている人であれば、当然、取っておいて損はないのですが、実際には介護の専門学校を卒業して資格を取得した人でも、辞めてしまっているという現状があります。
そのような介護の現場の現状も踏まえた上で、介護の資格を取らずに働き始めるのはありかどうか?という点について、4つのトピックを取り上げてお伝えしていきます。
読み終わった時には、介護の資格を働き始める前に取るべきかどうか考えるうえで必要な情報をひと通り知ることができるでしょう。
1.資格を持っていることより適性があるかが重要
良くも悪くも介護という仕事を語るときに論点として上がるのは「誰でもできる」という話題。
確かに目に見える形で行っている業務に関しては単純に見えてしまう部分もあるため、簡単な仕事だと思われがちです。
しかし、ベットから車いす、車いすからお風呂など、移乗であったり、長時間の立ち作業を行う必要があったりと、全身を使って働くためかなりの体力を要求されます。
当然のことながら、これまで長年デスクワークしかしてこなかった方や重たいものを持つことのない仕事に携わってきた人には辛い部分があるでしょう。
また、介護が必要な状態になっているとは言え、関わる高齢者たちはひとりひとり自我のある人間です。
中には人と関わることが得意ではなく、認知症を患っている方であれば、ひたすら罵詈雑言を投げかけてこられるような場面も多々あります。
介護の仕事というものは、心身ともにかなりの負担を抱えながら業務に取り組む必要のある職場がほとんどなのです。
冒頭で簡単に触れましたが介護の専門学校を卒業し、国家資格である介護福祉士の資格を取得したにも関わらず辞めてしまう人もいるくらい、仕事が合う人と合わない人の差が大きい業界です。
未経験で介護の仕事を始める人の場合、介護福祉士の資格を取得するには実務経験を積む必要もあり、介護福祉士実務者研修を修了しているという2つの条件を満たさなければ受験できません。
資格取得を考える前に、まずは介護の仕事を自分が問題なく取り組むことができるかどうかを働きながら見極めたほうが良いでしょう。
介護福祉士取得までには費用も時間もかかるため、後悔しないためにも自分に適性があるかどうか?、把握することが大切です。
2.資格を持っていなくても良い仕事をする人は多くいる
最初の項目で介護の仕事は心身ともに負担の大きい仕事であるということをお伝えしました。
しばらくの間、介護の現場で働いてみて自分に合っていると感じた方は、その後も長い年月働かれている人が多い印象です。
介護の現場で働き続けるために資格を取得しておくことは、仕事の質を上げるためにも良いことではあります。
しかし、実際のところ介護福祉士の資格というのは、3年以上の実務経験を求められ、介護福祉士実務者研修といって働きながら6ヶ月間も学校に通わねばありません。
基本的にこの資格を取るために専門学校への通学にかかる15万円前後の金額は自己負担です。
介護の仕事の給料は職場の規模にもよりますが、資格を持っていない状態では、そこまで高給とは言えません。
そうなると資格取得のために投資する元手のお金を確保するのが難しい場合もあるでしょう。
さらにいざ介護福祉士の受験資格を得ても、今度は難関である国家資格を取得するための勉強に取り組まねばなりません。
こちらも独学では難しく、専門学校の開講している対策講座を受けた方が合格率を高めることができるでしょう。
何より厳しいのが難易度の高い試験にも関わらず年に1度、2月頃に開催される試験のみです。
このように、介護の仕事の代表的な資格である介護福祉士は取得するためにお金も時間も必要であり取りづらい現状もあり、取るに取れない介護職員も多くいます。
「資格はあくまで資格でしかない」ため、日々、目の前の業務に懸命に取り組み、しっかりと学んでいる職員であれば、資格保有者以上に良い仕事をしている人もいるということは知っておくべきでしょう。
3.実は勉強が必要な職種ということは知っておくべき
介護の仕事というと、利用者の介助、オムツの交換といった単純な作業の部分に焦点が当たりやすいため、簡単な仕事と考えている人も少なくないでしょう。
しかし、実際のところは入所者様との接し方について学ばねばならぬことも多く、日々、研修や講座の種類は増えている状況です。
どのようなことを学ぶ必要があるのか?、いくつか例を挙げると、
- オムツの清潔な替え方
- 抵抗なくレクリエーションに参加してもらうための関わり方
- 認知症をお持ちの入所者様への対応方法
- 車いす上での転倒しにくい座らせ方
従来の介護に関わる部分だけでも、このような形で幅広い知識とスキルを身につけることが必要です。
さらに近年では最新の介護機器を導入する施設も増えており、その器具を利用することで、入所者様の状態がどう改善するのか?、正しい使い方、活用の仕方なども学ばなければなりません。
また、介護報酬の加算との兼ね合いもあり、既にほとんどの介護の職場では電子化された介護記録が導入されているはずです。
こちらも紙の記録の時であれば、手書きすれば良かったので特に問題なかったのですが、電子化されたことで使い方を覚える必要が出てきました。
介護の仕事と一口に言っても実は要求される業務の内容は幅広く、介助に関わる部分の知識とスキルは日々、進歩、改善されているので常に学び続けることが大切です。
ここまでの内容を読み、簡単だと思っていたけれど、意外と大変かも……と感じた人は、今一度、介護の仕事に就くべきか考え直したほうが良いでしょう。
4.最低限の実務が身についたら資格取得を考えるべき
介護の現場の現状、資格を取り巻く状況、給料の話など、できる限り包み隠さずに介護の職場についてお伝えしました。
ここまで読んでいただいてお分かりいただけたかと思いますが、確かに資格は大切ですが何よりも「現場の仕事を自分が問題なく取り組めるか」が最優先です。
介護職の唯一の国家資格である介護福祉士を取得するには、実際のところ時間もお金もかかります。
せっかく苦労して取得したのに、介護の仕事が思い描いていた仕事と違ったという理由で離職することになってしまうのではあまりに不幸です。
幸いなことに、現状では介護の資格を持っていなくても、介護に関わる仕事に就くことはできます。
まずは現場の仕事をひと通り経験してみる、半年~1年と腰をすえて取り組んでみるという形で自分の理想と現実のすり合わせを丁寧に行ってみましょう。
その上で長く続けられる、自分にとって介護は天職だと考えられるようになった時点で資格の取得を考えても遅くはありません。
しっかりと納得のいく結論を出せたのなら、前向きに業務の遂行能力を向上させるために学ぶことも苦にはならないはずです。
こちらの記事がこれから介護の職場に勤めることを考えているあなたが後悔のない選択をし、充実した日々を送るための手助けになれば幸いです。