警察官はあらゆる犯罪の予防、治安維持のために様々な活動を行っています。
我々が安心して日々を過ごすために必要不可欠な存在であり、生活の安全が確保されているのは、警察官の懸命な活動があってこそです。
故に、警察官は危険に晒される仕事が多く、就職するのも容易ではありません。
この記事では、警察官になるための方法から試験内容、難易度などについて詳しく解説していきます。
警察官とは?
「警察官」とは、警察庁または都道府県警察に所属し、市民の安全確保や犯罪の捜査・予防などを職務として行う公務員の一種です。
勤務先・階級によって公務員としての身分が異なり、例えば東京都を管轄する警視庁など、各都道府県警に勤務している場合は「地方公務員」となります。
一方で、国の行政機関である警察庁に所属している場合は「国家公務員」に分類されます。
昇進のハードルは高い
警察官には9つの階級があり、下から巡査・巡査部長・警部補・警部・警視・警視正・警視長・警視監・警視総監と続きます。
さらに上の序列として、警察庁の庁務を統括する警視庁長官があり、階級制度が適用されない「階級外」に位置していますが、警察組織そのものの最高位です。
警部までは昇任試験で昇進することができ、以降は実務経験などに基づいた選考による昇任となり、警視正に昇進することで自動的に国家公務員の身分へと上がります。
しかし、選考による昇進のハードルは非常に高く、全国にいる警察官の約9割が警部補までの階級であるのに対して、警部以上の階級は約1割しかいないと言われている程です。
警察官になるには?
警察官として採用される方法は、警察庁に就職して国家公務員になる「キャリア」か、都道府県警に就職して地方公務員になる「ノンキャリア」の2つに分かれます。
キャリア
警察庁に就職する場合は「国家公務員総合職採用試験」に合格した後、警察庁への「官庁訪問」で採用面接を突破しなければなりません。
採用後は幹部候補生として「警察大学校」に入学し、警察官になるうえで必要な知識・技術を身に付けていきます。
なお、国家公務員総合職採用試験は誰でも受けられる訳ではなく、大卒以上の学歴を持っていることが条件です。
ノンキャリア
対して、都道府県警に就職する場合は、各都道府県が実施する「警察官採用試験」を受験・合格することが必要です。
試験には1類・2類・3類という難易度の異なる区分があり、どの試験で採用されたかが就職後の昇進スピードに影響します。
合格後は全寮制の「警察学校」への入学が義務付けられており、6ヵ月~10ヵ月間にわたる研修期間を経て、法学や武道といった警察官に必要な知識・技術を学習します。
警察官採用試験に受けるための条件はなく、3類であれば17歳からでも受験が可能です。
ただし、警察官は肉体労働や不規則な勤務が多いことから、いずれの試験も身長・体重・視力と言った「身体要件」をクリアしている必要があるので注意しましょう。
警察官の仕事内容は?
警察官の部門は細かく分けられていて、その仕事内容もそれぞれ異なります。
ここでは、警察官の代表的な部門・仕事内容を挙げて紹介します。
地域警察
地域の安全を守る「地域警察」は、パトロールや遺失物の捜索・管理など、我々の生活に最も関わりのある仕事を担う部門です。
交通の安全を確保する「交通警察」は、 交通事故の防止を目標としている部門で、市民への安全指導や取締を行っています。
有名な「白バイ隊員」が所属しているのもこの部門で、マラソン大会時を始めとした大規模イベント時の交通整理も、交通警察が担う仕事の一つです。
刑事警察
そして、犯罪の捜査・犯人の検挙を担当するのは「刑事警察」という部門です。
事件の解決を目標に、事件現場に赴いて犯罪・事件に関わる証拠の分析・解析を行い、地道な捜査で犯人の足取りを追跡します。
その他、テロや災害時などから国民を守る「警備警察」、暴力団や密輸・密売グル―プなど、治安を悪化させる犯罪組織への対処を担う「組織犯罪対策」など、多くの部門が存在しているのです。
警察官の働き先は?
警察官の働き先は先述した警視庁・都道府県警だけではありません。
特定の状況下において、警備・応援などを目的に一時的な出向を行うこともあります。
警察署や交番
都道府県警察に所属する警察官はその都道府県内での勤務になり、地域ごとの警察署や、市民の警察窓口である交番の配属となります。
ただし、有事の際は空港警備・災害時派遣・警視庁などに一時的に出向することもあります。
大きな災害・事故が発生した際には、人命救助や交通整備の人員として、他の地域や都道府県まで応援に駆けつけることも多いです。
警察庁
警察庁の所属となった場合は、都道府県警察の署長といった管理者として勤務するほか、外務省など他の省庁に出向する場合もあります。
また、重要人物の訪問や大規模なイベントがあれば、事件・事故の未然防止や重要人物の警護を目的に、そのエリアを「特別警備箇所」として大人数を警備に向かわせます。
時には各都道府県に応援を要請して、警察組織が一体となって特別警備を行うこともあるのです。
警察官の難易度は?
警察官の採用試験における倍率は概ね5〜10倍程です。
例えば、警視庁の場合は5月・9月・1月に試験が実施され、平均倍率はそれぞれ4倍・8倍・13倍となっています。
また、2回試験がある都道府県警の場合は、1回目よりも2回目の倍率が高くなるケースが多いです。
二次試験が特に重要
採用試験はいずれも一次試験が筆記・二次試験が面接という形式となっており、最終的な合否は一次・二次の合計点で決まります。
筆記試験の難易度は公務員の中では低い方にあたり、受験者数の6〜8割くらいが一次試験を突破します(警視庁は非公開)。
問題は二次の面接試験であり、合否の判定基準は面接に委ねられていると言っても過言ではありません。
公開されている配点も、筆記:面接の得点比が1:2または2:3などで面接を優先している場合が殆どなのです。
いくら筆記で点数を取ったとしても、警察官の適正がないと思われれば、面接点を下げられてしまう可能性は十分にあります。
確実に合格を目指したいのであれば、試験勉強だけでなく面接対策も徹底しなくてはなりません。
警察官の試験内容は?
警察官の採用試験では、教養試験・論文試験・体力検査・適正試験・面接試験の5つが実施されます。
教養試験・論文試験について
教養試験では文章理解や政治経済、日本史など、一般的な知能・知識をテストする内容で、正誤を答える「五肢択一式」となっています。
多くの科目が出題され、最も問われるのは現代文・古文・英文や数的処理・判断推理といった一般知能分野です。
論文試験では、課題に対する思考力・表現力・文章構成力などの能力が問われ、警察官としての心構えや治安・犯罪に対する認識・意見などについて論述します。
一般的には、制限時間が60〜120分・字数は800〜1200字程度となっています。
体力検査・適正試験・面接試験について
体力検査は一次・二次または両方で実施され、種目は幅跳び・握力・持久走・シャトルランなどから6種目選ばれます。
それぞれに基準回数(基準値)が設定されており、その数字を超えれば合格です。
適正試験では、作業の能率・正確性を計る「クレペリン検査」や、受験者の性格・特性を検査する「Y−G式性格検査」を行います。
面接試験は二次試験で行われるのが一般的で、受験者1人で複数の面接官と対面する「個別面接」、複数人で特定の課題に関するディスカッションを行う「集団討論」などが実施されます。
まとめ
ネット詐欺やサイバー攻撃、犯罪組織の蔓延など、現代社会では高度情報化に伴って犯罪の種類も増加しつつあります。
そのため警察官には、法学だけでなく経済学や情報学など、様々な知識・応用力が求められています。
しかし、生産年齢人口の減少に伴う人手不足によって、犯罪の対応範囲を広げることが困難な状況に陥っているのです。
自身の知識・経験を世のため人のために活用したいと考えている方は、警察官の道に進むことも検討してみましょう。