火災・爆発の可能性がある危険物を取り扱ったり、その取り扱いに立ち会う資格を持つのが危険物取扱者です。
危険物の対象となる物質は多く、あらゆる企業が危険物取扱者を必要としているため、就職・転職のために資格取得を目指す人も少なくありません。
この記事では、危険物取扱者の仕事内容や働き先、資格試験の難易度・内容などを詳しく解説していきます。
危険物取扱者とは?
危険物取扱者とは、一般の人では取り扱えない危険物質を管理するための国家資格です。
火災予防・災害対策を目的とした消防法では、火災・爆発などの可能性が高い物質を「危険物」として指定しています。
指定の対象は石油・燃料・薬品など様々で、それらの危険物質を取り扱う業務は危険物取扱者の資格を持つ人のみに限られているのです。
甲種・乙種・丙種の違い
危険物取扱者の資格には「甲種」「乙種」「丙種」の3種類があり、それぞれで許可されている業務範囲が異なっています。
甲種は、第1類~第6類まで全種の危険物を取り扱ったり、定期点検・保安監督などの業務を行うことが認められています。
また、甲種の危険物取扱者の立ち会いがあれば、無資格者でも危険物の取り扱いが可能です。
実務を6カ月以上経験すると「危険物保安監督者」に昇任でき、さらに甲種防火管理者としても認定されます。
乙種の場合は、第1類~第6類のうち個別に資格を取得した危険物しか取り扱えません。
資格がある危険物については、甲種と同じく取り扱い・定期点検・保安監督などの業務や、無資格者が取り扱う際の立ち合いも可能です。
丙種はさらに限定され、取り扱えるのはガソリン・軽油・重油・灯油など特定の危険物のみです。
また、それらの取り扱いと定期点検は可能ですが、保安監督や立ち会いなど責任の伴う業務はできません。
危険物取扱者になるには?
危険物取扱者になるには、甲種・乙1種~乙6種・丙種それぞれの種類に応じた資格試験に合格する必要があります。
乙種と丙種には年齢・学歴といった制約は無く誰でも受験できますが、甲種の場合は受験資格が設けられています。
甲種を受験するには、大学で化学に関する学科を卒業、または化学系の単位を15以上修了、修士・博士で化学系を専攻といった学歴が必要です。
学歴が無い場合は、乙種のいずれかを取得しており且つ2年以上の実務経験など、特定の職歴や資格を有していないと受験できません。
受験のチャンスは多い
危険物取扱者の試験日は全国一律ではなく、都道府県によって異なります。
東京は毎月試験を実施していますが、その他の県では年に2~3回ほどです。
試験日程については、消防試験研究センターの公式サイトで4~9月・10~3月の期間に分けて公開しています。
資格試験の申し込みはWeb申請・願書のいずれかを選ぶことができ、願書は消防試験研究センターの支部または各県の消防署で受け取れます。
危険物取扱者の仕事内容は?
先に説明したように、危険物取扱者は種類ごとで対応できる危険物の範囲が異なるため、その仕事内容も違ってきます。
甲種
全種類の危険物を取り扱える甲種は、可能な業務範囲が最も広いため工場・研究施設など様々な場所で安全管理に従事しています。
主に危険物の定期点検・保安監督といった業務のほか、無資格者の危険物取り扱いに立ち合うことができるため、現場監督のような立場の仕事を担う事も少なくありません。
乙種
乙種は、第1類~第6類のうち資格に対応している危険物であれば、甲種と同様の業務を行うことが可能です。
取り扱い可能な危険物であれば、無資格者の取り扱いに立ち会うこともあります。
丙種
丙種の場合は、ガソリンや灯油など扱える危険物が限られているため、可能な業務範囲も狭くなります。
一般的には、ガソリンスタンドの従業員や灯油の配送スタッフ、廃油処理工場での定期点検といった仕事に就くことが多いです。
なお、丙種は無資格者の立ち会いが認められていないため、実務者としての仕事に限定されています。
危険物取扱者の働き先は?
危険物と定められている物質は非常に多く、危険物取扱者の働き先も様々です。
工場
石油・燃料など一定量以上の危険物を所有している工場・施設では、危険物取扱者の雇用が法律で定められています。
そのため、金属製錬工場やめっき工場、化学工場や半導体工場といった各種工場では危険物取扱者の雇用が必要です。
甲種・乙種の有資格者であれば、これらの工場で技術者または責任者として働くことができますが、甲種の資格が採用条件となるケースもあります。
研究所
また、硝酸・アセトン・トルエンなど、危険物に指定されている物質を取り扱う研究所でも危険物取扱者が必要になります。
危険物の管理は危険物取扱者でなければ行うことができず、取り扱いに関しても立ち会いが必須となるためです。
その他
危険物の管理以外にも、消防士やタンクローリーの運転手など、危険物取扱者の知識・資格が有利になる職業に就く選択肢もあります。
また、丙種・乙4種の有資格者であれば、ガソリンや灯油といった引火性の液体を扱うことができるため、ガソリンスタンドのスタッフに従事するのが一般的です。
危険物取扱者の難易度は?
危険物取扱者の試験難易度は種類で異なり、基本的に甲種がやや高く、乙種・丙種は平均程度となっています。
試験の平均合格率は甲種40%・乙種60%・丙種50%と高い水準にありますが、乙4種のみ35~40%と低めの数値が出ています。
これは、乙4種の指定対象がガソリン・灯油など日常生活に関わる危険物が殆どで、就職・転職に向けた受験者が多いものの、本気で受験する人が少なく不合格になってしまっている為です。
しかし、危険物取扱者の合格条件は「各科目60%以上の正解率」と易しめで、決して難しい試験ではありません。
きちんと対策すれば合格できる
乙4種以外の合格率が全て高いことからもわかるように、きちんと試験対策を行っていれば合格できる部類の試験です。
乙種・丙種は高校生の時点で学習する内容も多く、指定数量の考えなどが少し難しい問題はあるものの、過去問を解いていれば合格を目指せます。
ただし、甲種は専攻者・就業者向けの資格であり、大学で学ぶような専門知識を問われることも多いので、しっかり対策を講じましょう。
危険物取扱者の試験内容は?
危険物取扱者の試験では、正誤問題・個数問題・計算問題・空欄補充問題の4種類の形式で出題されます。
最も多いのが正誤問題と個数問題で、国語的なややこしい設問が殆どです。
甲種・乙種・丙種の出題範囲・設問数はそれぞれ次のようになっています。
- 甲種:法令15問・危険物の性質20問・物理学及び化学10問
- 乙種:法令15問・危険物の性質10問・基礎的な物理学及び化学10問
- 丙種:法令15問・危険物の性質10問・燃焼及び消化に関する基礎知識5問
合格ラインは各科目60%以上の正解率と定められています。
科学技術の発展で危険物取扱者の需要はますます増加する
科学技術の発展により、危険物を取り扱う場面は増え続けています。
そのため、危険物取扱者の存在が必要となる企業・施設も多く、資格自体が大きなアピールポイントに繋がるほど需要は大きいです。
危険物取扱者への就職・転職を目指していなくても、あらゆる危険物から己の身を守るために、また自身の評価を上げるためにも取得するべき資格と言えます。