国家公務員総合職は行政機関を統制する地位に就き、国の政策運営に関わる重要な職務を担っています。
重要な施策の立案や企画に携われるため、国家公務員総合職の希望者は多く採用試験は難関です。
それでは、国家公務員総合職になるには、どんな試験を受けなければならないのでしょうか?
この記事では、国家公務員総合職の試験内容や難易度を含め、勤務先や仕事内容について解説していきます。
国家公務員総合職とは?
国家公務員には、内閣総理大臣・国会議員・裁判官などの特別職と、それ以外の一般職の2種類があります。
その中でも、一般職はさらに総合職・一般職・専門職の3つに細分化されています。
このように国家公務員総合職は一般職の一部であり、公務員の中でもエリートとされる上級公務員を指すのです。
総合職の職員はキャリア官僚と呼ばれ、官僚機構を取り仕切る中心的存在と言えるでしょう。
政策の企画・立案や制度設計など、国の行政を左右する重要な事務を担当しており、そんなキャリア官僚のトップに立つ地位が事務次官です。
国家公務員総合職には法文系・理工系農学系・教養といった採用区分のほか、大学院卒業者や社会人対象など学歴別の試験区分もあります。
国家公務員総合職になるには?
国家公務員総合職として働くためには、国家公務員総合職採用試験に合格しなければなりません。
この採用試験には受験資格が定められています。
受験資格について
まず、国家公務員総合職は国の政策を左右する重要な仕事で、外国人の採用は認められていないため、日本国籍を持つことが必要です。
主に院卒者試験と大卒程度試験の2つの試験区分があり、それぞれで受験資格が異なります。
院卒者試験の場合、30歳未満で大学院修了または大学院修了見込みであることが条件となり、大卒程度試験ならさらに21歳以上30歳未満の年齢制限が課されます。
成年被後見人・被保佐人は受験できないほか、禁錮以上の刑を科された人や懲戒処分を受けた公務員は一定期間が経過するまで受験できません。
採用面接もある
国家公務員総合職採用試験に合格すると、採用候補者名簿に名前が載ります。
これで自動的に配属先が決まるわけではなく、合格者個人が中央省庁を訪問して面接を受け採用してもらわなければなりません。
官庁訪問をすると、原則として成績上位者から優先的に採用されます。
内定をもらえるのは1つの府省だけに限定されているため、成績優秀者でも訪問先の官庁に自分より上位の訪問者がいれば、就職できないこともあるのです。
逆に、訪問先の官庁で自分より優る競争相手がいなければ、他の官庁では不採用となる低い成績でも採用されることがあります。
ただし、採用候補者名簿に載った後3年間は官庁訪問が許されているため、1年目に希望する官庁に入れなくても翌年かその次の年に採用される可能性は残されています。
国家公務員総合職の仕事内容は?
国家公務員総合職は、政策の企画や法律の立案など、国家の方針に関わる重要な行政事務を担当します。
予算編成や行政行為の妥当性などを検討し、国会が開かれれば開催期間中は対応に追われるでしょう。
国会で大臣が答弁する際、大臣の背後で助言や情報提供をしているのは、国家公務員総合職なのです。
特別職からの要請に従い具体的な政策立案などを行うのが総合職で、総合職の指示に従って事務処理を手がけるのが下位の一般職と言うことになります。
総合職は幹部候補生の意味合いが強く、早い段階から強大な行政権を行使できる立場に立てます。
特定の部署に長期間留まることがなく、2年おきに異動して新しい分野で活躍するスキルを身につけられるでしょう。
こうして、様々な分野で仕事をした総合職は、ジェネラリストとしてキャリアアップできるのです。
国家公務員総合職の働き先は?
国家公務員総合職の主な勤務先は、内閣の管轄下にある1府12省庁です。
1府とは内閣府のことであり、12省庁は、総務省・法務省・外務省・財務省をはじめ、文部科学省・厚生労働省や農林水産省・経済産業省などが挙げられるでしょう。
また、国土交通省と環境省のほか、防衛省や国家公安委員会も12省庁に含まれます。
このほか、独立行政法人の会計検査院や人事院も総合職の勤め先となり、公正取引委員会・文化庁など、外局と位置付けられる国の行政機関でも総合職は活躍しています。
国家公務員総合職の難易度は?
国家公務員総合職試験の倍率は部署によって異なりますが、一次試験・二次試験を合わせた最終合格倍率は10倍から20倍となっています。
一次試験は5倍から10倍なので、一次試験を通過すれば半分程度が合格できると言えるでしょう。
合格点はおよそ半分程度の得点と言われており、高得点を目指す必要はありません。
国家の政策に関わる仕事に就けるという魅力から、国家公務員総合職の試験は毎年人気があり、司法試験などと同様に難関の試験と言われています。
国家公務員総合職の試験内容は?
総合職試験はどの試験区分も一次試験と二次試験があります。
一次試験では選択式の基礎能力試験と専門試験があり、二次試験では記述式の専門試験・政策論文試験と面接方式の人物試験の3つを受けなければなりません。
どの試験区分でも、一次試験の基礎能力試験と二次試験の人物試験の内容は共通問題になっています。
基礎能力試験では、文章理解や数的推理などの一般知能分野と、自然科学・社会科学・時事問題などの一般知識分野が試験範囲です。
なお、このほかにTOEFL(iBT)・TOEICやIELTS・英検といった英語の試験で一定の得点があれば、15点から25点の加算を受けられるでしょう。
試験合格後は官庁訪問の面接が待っており、これをクリアして初めて内定をもらえるのです。
試験区分による違い
試験の区分として、院卒者試験には法務区分があり、大卒程度試験には教養区分が設定されていることにも注意しましょう。
法務区分を受験できるのは司法試験合格者で、教養区分は大学3年生から受験でき、それぞれ試験の時期が若干異なります。
- 法務区分以外の院卒者試験:4月末に一次試験、5月末から6月中旬に二次試験
- 法務区分の院卒者試験:9月末に一次試験、10月初旬に二次試験
- 教養区分以外の大卒程度試験:4月末に一次試験、5月末に二次試験
- 教養区分の大卒程度試験:9月末に一次試験、11月中旬に二次試験
2次試験では、院卒者試験・大卒程度試験の両区分ともに専門記述式試験と人物試験があり、院卒者試験では政策課題討議試験、大卒程度試験では政策論文試験も受験しなければなりません。
国家公務員総合職になって国家の政策運営や法律制定に関わろう!
国家公務員総合職になれば、国家の行き先を決める重要な政策をサポートしたり、法案の立案や施行に関わる仕事ができます。
試験は司法試験並みの難関と言われていますが、職務の重要性から考えれば合格のための努力を惜しむ余地はないでしょう。
国家の取り組みに直接かかわり国民のために貢献したいという人は、国家公務員総合職の試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。