空の安全を守る航空管制官は、非常に人気のある職業の一つです。
しかし、あこがれだけで簡単にできる仕事ではなく、判断を一つ間違えれば重大事故につながってしまうこともあるとても責任の重い業務でもあります。
航空管制官は具体的にどんなことをしているのか、どうすればその職につくことができるのか、仕事のやりがいやメリットなども含めて説明していきます。
航空管制官とは?
区分 | 国家資格 |
---|---|
カテゴリ | 航空 |
受験資格 | ・21歳以上、31歳未満 ・21歳未満の場合は大学・高専を卒業、もしくは翌3月までに卒業見込み |
試験日程 | 毎年5月〜9月 |
試験方法 | 筆記試験・適性試験・人物試験・身体検査 |
試験会場 | 全国主要都市 |
受験料 | 無料 |
登録・更新 | なし |
難易度 | |
おすすめな人 | 学生 社会人 |
航空管制官は、航空機が安全に離発着できるよう運航の誘導を行う人です。
航空機同士が安全に間隔を保てるよう、レーダーや無線、目視によって得た情報をもとにパイロットと通信し、離着陸の順位付けや許可といった各種の指示を行っています。
航空運航の安全を確保するためには欠かせない、空の交通整理係の役割をつとめています。
業務は主に3つ
航空管制官の業務は主に次の三つ。
- 管制塔から航空機を目視で確認し、離着陸や走行経路などに指示を出す「飛行場管制業務」
- 空港から離陸した航空機を方向別に誘導し、航空機間の距離を安全に保ちながら上昇させる「ターミナル・レーダー管制業務」
- 空港間を飛行する航空機に対して指示や許可を与える「航空路管制業務」
いずれの仕事内容も、現在の状況を冷静に把握し、短時間のうちに状況に応じた最適な選択を行うことが求められます。
そのため、急な事態の変化や突発的なトラブルにも瞬時に対応することのできる高度な技能と判断力が必要とされる業務といえます。
航空管制官のメリットは?
航空機は日常生活になくてはならない高速の移動手段として定着していますが、一歩間違えれば大惨事になりかねない危険性もはらんだ乗り物です。
それだけに、乗客や乗務員の命を守り空港や飛行機の安全を確保する航空管制官は大変やり甲斐のある仕事といえるでしょう。
さらに労働条件の面でいえば、国家公務員として安定した収入を得ることができる一方、基本的に時間外の勤務はないので、就業時間が終われば仕事を終えられるという環境にあります。
ふだんはあまり表に出るケースはありませんが、陰で乗客乗員の安全を守り、フライトのたびにパイロットや客室乗務員などからの信頼を寄せられる縁の下の力持ち。
責任の重さに比例して、社会的に尊敬される職種であり、印象や評価が非常に高いということも航空管制官という職業の大きなメリットだといえます。
航空管制官の取得方法は?
航空管制官になるには、まず人事院が行う航空管制官採用試験に合格することが必要です。
受験資格は受験する年の4月1日時点で21歳以上30歳未満か、21歳未満で、大学、短大、高等専門学校などの卒業者か卒業見込み者に与えられます。
ただし、視力や聴覚の検査もあるため注意が必要です。
試験は毎年5月頃から9月頃にかけて、全国主要都市で行われます。
この試験に合格すれば、国家公務員として任用され給与が支給されるほか、次のステップとして航空保安大学校で研修を受けることになります。
航空保安大学校
航空保安大学校は航空保安職員を養成する国の教育訓練機関です。
同校への入校は、基本的に合格した翌年度の4月、8月、12月の3回。
学科と実技の修得に加え、航空管制に必要な航空無線通信士の資格もこの時期に取得します。
成績不良で修了見込みが得られない場合は国家公務員の身分を失うことがあります。
そして、この航空保安大学校での研修を終えた後に全国各地の空港や航空交通管制部に配属されます。
そこで航空保安職として働きながら専門研修を受講、その後技能試験を受験する流れです。
この技能試験に合格すれば、技能証明を取得でき、航空管制官として管制業務に就くことになります。
航空管制官の難易度は?
時期 | 受験者数 | 合格率 |
---|---|---|
2022年 | 808人 | 10.5% |
2021年 | 839人 | 5.0% |
2020年 | 767人 | 5.3% |
2019年 | 912人 | 11.5% |
2018年 | 1,015人 | 13.1% |
航空管制官の採用試験は一次から三次まで三段階に内容が分かれています。
一般的な公務員としての基礎能力や、英語のヒアリングと英文解釈、和文英訳、英文法の能力などを測る一次試験。
英語と日本語で面接が行われる二次試験。
視覚・聴覚をはじめとした身体測定や航空管制業務に必要な適性などを測る三次試験です。
試験内容は多岐にわたるうえ、高度な英語コミュニケーション能力が求められるのが特徴です。
航空管制官は人気のある職業で、2019年までは例年10%強の合格率で推移してきました。
しかし、2020年からは採用人数自体がかなり絞られてきたことで、合格率はよりいっそう下がっています。
このことから航空管制官の難易度はかなり高いものといえます。
航空管制官はこんな人におすすめ!
どんな時にも冷静な判断を下せる人
航空管制官には、あらゆる状況で的確な判断を下すことが求められます。
パイロットは航空機を制御する立場で乗客の安全に責任を持ちますが、航空機同士の運航にかかわる安全性の見極めは自ら判断することはできません。
そこに責任を持つのは航空管制官です。
アクシデントは常に予想を超えて起こり、どんなケースにも冷静に状況を判断して、パイロットに的確な指示を出さなければ、大事故につながってしまします。
どんな時でも落ち着いて判断し、正しい指示が出せる冷静さを持った人がこの仕事には向いているでしょう。
チームワークが保てる人
航空管制官の仕事は、管制官とパイロットだけのやり取りで成り立つものではありません。
同じ使命感で業務に向き合う航空管制運航情報官や航空管制技術官、空港職員、気象庁職員といったすべてのスタッフとの連携がうまくいって、初めて安全運航が成り立つのです。
スタンドプレーではなく、周囲の力を結集して仕事にあたることができる人こそ、航空管制官に向いているといえます。
モチベーションを保ち続けられる意思の強い人
国家公務員という仕事柄、航空管制官には異動がつきものです。
異動先の仕事内容によっては取り組む業務内容もこれまでの知識では追いつかないということが少なくありません。
そのたびに知識を更新して資格に挑み、常に最新の情報に基づいて業務を行うために、モチベーションは高く維持し続けていく必要があります。
業務や生活環境の変化に柔軟に適応し、常に向上心を持ち続ける意思の強さが、航空管制官を目指す人には求められてきます。
航空管制官は高い技能と語学力が必要
常に航空機の運航を見守り続け、空の安全を陰で支えている航空管制官。
この仕事には人一倍冷静な判断力と責任感を兼ね備えた資質が求められます。
また、管制業務は主に英語で行うため、応用力のきいた語学力も求められてきます。
人気が高く難易度も高い職業ですが、自分の手で空の安全を守りたい、という熱意のある人はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。