髪の毛を刈り込んだり髭を剃ったりして容姿を整える理容室では、理容師と呼ばれる人が働いています。
人々の生活を支える職業のひとつであり、将来は理容師になりたいと考える人も少なくないでしょう。
そこで、今回は理容師という職業を目指す上で知っておきたい基本的な知識から、仕事で必要となる資格取得に関する情報などを紹介します。
理容師とは?
区分 | 国家資格 |
---|---|
カテゴリ | 美容 |
受験資格 | 厚生労働大臣指定の養成施設で学ぶ ・昼間課程:2年以上 ・夜間課程:2年以上 ・通信課程:3年以上 |
試験日程 | 毎年2回(8月〜9月、2月〜3月) |
試験方法 | 筆記試験・実技試験 |
試験会場 | 全国各地 |
受験料 | 25,000円 |
登録・更新 | 合格後に要登録 |
難易度 | |
おすすめな人 | 学生 |
理容師の定義
理容師法第一条の二によると「理容」とは「頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えること」、また理容師とは「理容」を業とする者をいうと定義されています。
つまり、理容師は事業として「理容」を行っている人です。
しかし、誰でも勝手に理容師を名乗れるわけではありません。
国家試験である理容師試験に合格をして資格を取得することが、理容師として仕事をするための条件です。
理容師の仕事
理容師法で定義されている「理容」を行うことが理容師の仕事ということですが、具体的には主にカット(頭髪の刈込)、パーマ、シェービング(顔そり)の3つです。
理容室を利用する客の多くは男性であることから、理容師は男性の髪や髭を整えるための技術・知識・センスが求められます。
理容師にはできない仕事
同じ容姿を整えることであっても理容師にはできない仕事があります。
それがヘアセットとメイクです。
この2つは美容師の仕事とされる「美容」に含まれるものであり、理容師は行うことができません。
なお、以前は女性向けのパーマというのも理容師ができない仕事の一つでした。
これは昭和50年前後に理容業界と美容業界の間で起こった「パーマ論争」の影響によるものです。
お互いの領分を超えて仕事をすることがないように、理容師は女性のパーマをしてはいけないし、美容師は男性のカットをしてはいけないということになったのです。
しかし、時代が移り変わって理容室と美容室の利用客を、性別で区分けすることは難しくなりました。
そのため、理容師と美容師を長年縛ってきた法規制は、2015年に終りを迎えたのです。
理容師のメリットは?
景気に左右されない
理容師として仕事をすることのメリットは、景気に左右されにくいことです。
髪は自分の意志で長さを調整できるものではなく、時間が経てば伸びていきます。
そのため、世の中が不景気であろうとも需要が絶えることはありません。
チェーン店で働く場合でも自分の店を持つ場合でも、技術を磨いて固定客を確保できれば安定した生活ができるでしょう。
また、理容師は美容師とは違いシェービングを行うことができる点もメリットと言えます。
例えば、重要なイベントに参加したり、写真撮影したりするために本格的なシェービングをしたい人にとって、頼れるのは理容師だけです。
競争相手が少ない
その他にも、理容師になることのメリットには、人数が少ないということも挙げられます。
理容師は理容室とともに減少をしています。
令和2年度衛生行政報告例によると理容室で働いている理容師の人数は、美容室で働いている理容師の半分以下です。
理容師が減少している理由は、美容室に男性客を取られているなど複数の要因が考えられます。
いかなる理由であろうとも、理容業界にとっては憂慮するべき状況であることは間違いないでしょう。
しかし、理容師の人数が減少しているということは、競争相手が減少していることも意味します。
優秀な理容師として周囲に認められる人材になれば、理容師を必要とする人たちが集まってくるでしょう。
理容師の取得方法は?
理容師になるには、理容師国家試験を受験し合格する必要があります。
その試験を受験するためには、厚生労働大臣が指定する理容師養成施設いわゆる理容学校に入らなければいけません。
理容学校で理容師として必要な知識・技術を学ぶ期間は、昼・夜間課程であれば2年、通信課程であれば3年です。
理容学校ごとに、学べる内容や雰囲気が異なります。
理容学校ごとの特徴・通学距離などを慎重に検討した上で、入学試験を受けましょう。
試験は年2回
理容師国家試験は、公益財団法人理容師美容師試験研修センターが実施しています。
センターや理容学校で配布する願書を入手してから、必要事項を記入して提出期間内に郵送をすれば受験の申込みができます。
試験の開催時期は春と秋の2回あり、実技試験と筆記試験で合格基準を超える点数を獲得できれば合格になり理容師の資格を取得できます。
もし、どちらかの試験が不合格で試験に合格できなかったときは、次回の試験では合格した試験が免除されます。
また、すでに美容師の資格を持っている人は、筆記試験で「理容技術論」以外の科目が免除になります。
理容師の難易度は?
受験者数 | 合格率 | |
---|---|---|
2021年度前期 | 752人 | 64.1% |
2020年度後期 | 1,188人 | 83.5% |
2020年度前期 | 866人 | 70.8% |
2019年度後期 | 1,285人 | 75.6% |
2019年度前期 | 819人 | 65.0% |
理容師国家試験の合格率は、低いときでも6割前後、高ければ8割〜9割前後です。
難関資格とは言えませんが、真面目に勉強をしなければ不合格になる程度の難易度と言えるでしょう。
さらに、新卒受験者は8割〜9割が合格しているのに対して、既卒受験者は3割前後と相当に低い合格率です。
これは、理容学校を卒業してから受験をする場合は、勉強をするための環境及び時間を確保できないことが理由として考えられます。
したがって、試験勉強に集中できる新卒の時分に、合格を目指して努力した方が良いでしょう。
理容師国家試験では、通っている理容学校がどれだけ試験対策に力を入れているかも合格率を左右するポイントです。
高い合格率を誇る理容学校であれば、普段から生徒一人ひとりの状況を把握して苦手を克服するためのフォローを欠かしません。
また、筆記試験対策や本番を想定した実技の模擬試験を実施することで、知識・技術の向上に加えて緊張をせずに実力を発揮できるように精神力を鍛えています。
理容師はこんな人におすすめ!
理容師という仕事は、
- 手先が器用な人
- 美的感覚に優れている人
- 世間の流行をよく見ている人
などにおすすめです。
これらの性質を持った人であれば、利用客に満足してもらえるカット・パーマ・シェービングができるでしょう。
また、理容師という仕事は、基本的に利用客と一対一で仕事をします。
利用客から要望を聞いて、カットやパーマをするにはコミュニケーション能力も必要です。
コミュニケーション能力に自信がある人なら、仕事中の会話などを通じて心を通わせることができ常連客をつくることも容易でしょう。
加えて、理容師の仕事では、カット・シャンプー・マッサージなど様々なことを行わなければいけませんが、いい加減な仕事をすれば、その利用客は二度と来なくなるでしょう。
気持ちよく帰ってもらうためには、丁寧な接客が求められます。
したがって、ホスピタリティを持った人にもおすすめです。
理容師として活躍できる未来を掴もう
理容師はやりがいもビジネスチャンスも十分にある仕事です。
理容師として働きたいと思っているならば、そのために必要な国家資格の取得方法を理解して、合格を目指して勉強しましょう。
努力が実り理容師になれたとき、多くの人に満足してもらえる仕事ができるようになれば、独立して自分のお店を持つことも夢ではありません。