労働安全・労働衛生コンサルタントという資格をご存知でしょうか。
近年、労働環境に対する社会の目が厳しくなっています。
労働安全・労働衛生コンサルタントは、労働環境の状況を把握し、改善のための計画を立て、企業に指導する仕事です。
また、労働安全・労働衛生に関する規則や点検の基準などを作ることもあります。
労働安全や労働衛生に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
労働安全・労働衛生コンサルタントとは?
区分 | 国家資格 |
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カテゴリ | 保安・技術 |
受験資格 | 実務経験5年以上 (学歴等により年数は異なる) |
試験日程 | 毎年10月 |
試験方法 | 筆記試験・口述試験 |
試験会場 | 全国各地 |
受験料 | 各24,700円 |
登録・更新 | 合格後に要登録 |
難易度 | |
おすすめな人 | 社会人 |
労働安全コンサルタントと労働衛生コンサルタントは、労働者の安全衛生水準向上の為に、事業所に指導したり、労働環境などを診断したりする国家資格です。
厚生労働大臣が指定したコンサルタント試験機関である安全衛生技術試験協会が行う試験に合格し、協会に登録することでコンサルタントとして活動することが出来ます。
事業者からの依頼で事業場の診断を行い、それに基づいた指導を行うことや、職場の労働災害や職業病の未然防止・再発防止対策などを具体的に事業者に助言する専門家です。
社会の変化により、職場にもさまざまな雇用形態、それぞれ違った背景を持つ労働者が働いています。
また、設備や環境は複雑で高度化していて、サービスも多様化しています。
その変化への対応がうまくいかない場合には、重篤な災害やメンタルヘルスへの悪影響などが発生してしまうこともあるでしょう。
事業所の中には、法令違反や間違ったアプローチが行われているところがあります。
事業者自身が、労働安全・労働衛生についての法的義務を把握していなかったり、正しい知識を持っていなかったりすることもあります。
また、労災防止について正しい知識を持っていないこともあります。
労働安全・労働衛生コンサルタントの仕事は多岐にわたりますが、基本的には、安全・衛生のスペシャリストとして、事業所等の安全性について診断し、指導を行っていきます。
労働安全・労働衛生コンサルタントのメリットは?
需要が大きい
一つ目のメリットは、高い需要が見込めることです。
労働安全・労働衛生コンサルタントは、労働者の労働環境を向上するように助言、指導することが仕事です。
最近は、「ブラック企業」という言葉をよく耳にするように、労働安全や労働衛生を疎かにする企業に対して、厳しい目が向けられています。
労働者の安全衛生基準を向上させることに対して、企業側のニーズが高まっているといえるでしょう。
労働環境に問題があり、労働基準監督署などから指摘された場合、最悪のケースでは、事業の継続が難しくなってしまいます。
そのため、企業にとって労働環境の改善は必須事項だといえます。
この先もこの流れは続くと思われるので、労働安全・労働衛生コンサルタントのニーズは増えることが予想されます。
年収が高い
二つ目のメリットは、高い収入が見込めることです。
労働安全・労働衛生コンサルタントは、スペシャリストであるのにふさわしく、給料も高くなっています。
年収のデータは、いろいろなところから出されていますが、約600万円から700万円ほどとなっています。
これは、薬剤師よりも高く、一級建築士と同じくらいの水準です。
大手企業の場合、労働安全や環境に問題が見つかり、数日間営業停止になった時には、多大な損失が出てしまいます。
また、メディアに大きく取り上げられてしまった場合には、企業のイメージも損なわれてしまいます。
そのようなことを避けるために、労働安全・労働衛生コンサルタントに分析や指導を依頼するので、単価は高くなります。
また、企業だけではなく、厚生労働省や労働局などからの委託事業もあります。
労働安全・労働衛生コンサルタントの取得方法は?
どちらも筆記試験および口述試験によって試験が行われます。
それぞれ受験資格が少し違うので、よく確認しておきましょう。
労働安全コンサルタント
労働安全コンサルタントは「機械」「電気」「化学」「土木」「建築」のうちいずれか一つを受験出来ます。
詳しくは、安全衛生技術試験協会のホームページにありますが、労働安全コンサルタントの受験資格は以下の通りです。
- 短大を除く大学において、理系の正規の課程を修めて卒業し、その後5年以上安全の実務に従事した人
- 短大または高等専門学校で、理系の正規の課程を修めて卒業し、その後7年以上安全の実務に従事した人
- 高校または中等教育学校において理系の正規の学科を修めて卒業し、その後10年以上安全の実務に従事した人
- 労働安全・労働衛生法の規定による安全管理者として10年以上その職務に従事した人
安全の実務とは、事業場の安全管理部門の管理職や、安全管理者等のほか、生産現場等で安全管理を担当し、所掌する人が安全に関する業務を行っていることを指します。
また、「技術士試験合格者」「第1種電気主任技術者」「1級土木施工管理技士」「1級建築士試験合格者」も実務経験に含まれます。
労働衛生コンサルタント
労働衛生コンサルタントは「保健衛生」「労働衛生工学」のいずれか一つを受験出来ます。
受験資格は以下の通りです。
- 短大を除く大学において、理系の正規課程を修め、その後5年以上衛生関係の実務に従事した人
- 短大もしくは高等専門学校で理系の正規課程を修め、その後7年以上衛生関連の実務に従事した人
- 中等学校もしくは高等学校で理系の正規の学科を修め、その後10年以上衛生関連の実務に従事した人
- 医師、歯科医師、薬剤師
- 保健師として10年以上業務に従事した人
- 技術士試験合格者、1級建築士試験合格者、衛生工学衛生管理者免許を有し、衛生工学に関連する実務経験がある人
- 衛生管理者として10年以上の実務経験がある人
- 厚生労働大臣の登録を受けた者が行う衛生に関する講習を修了し、かつ、15年以上の実務経験がある人
労働安全・労働衛生コンサルタントの難易度は?
筆記試験の合格率は、労働安全・労働衛生コンサルタントのどちらも約3割となっています。
その後、口述試験に進むと、労働安全コンサルタントでは約8割の合格率となっていて、労働衛生コンサルタントでは、約5割の合格率となっています。
合格率からいうと、労働衛生コンサルタントの方がやや難しいといえるでしょう。
合格基準は以下のように設定されています。
- 筆記試験:総点数の概ね60%以上で、40%未満の科目がないこと
- 口述試験:4段階評価の上位2ランクであること
令和2年の最終合格率は、労働安全コンサルタントが22.0%、労働衛生コンサルタントが23.5%となっています。
いずれの資格も、応募条件が厳しいわりに合格率が低いので、難しい資格だといえます。
労働安全・労働衛生コンサルタントはこんな人におすすめ!
労働安全や労働衛生について興味のある人におすすめな資格です。
例えば、保健師として長年勤めてきた人や、企業で安全に関する仕事に携わってきた人、薬剤師の資格を持つ人などが取得すると転職にも有利です。
労働安全・労働衛生コンサルタントは、労働災害防止のための資格の中で最難関になります。
安全衛生技術試験協会のホームページによると、令和2年の受験者数は、労働安全コンサルタントが1,166人、労働衛生コンサルタントが439人となっています。
収入が高く、ニーズが多い割には、受験者数が少ないので、狙い目の資格だといえます。
また、国家資格なので、安定して長く稼ぎたい人にもおすすめです。
労働環境のスペシャリストとしてニーズがある仕事
労働安全・労働衛生コンサルタントは、労働者を取り巻く環境を整えるやりがいのある仕事です。
難しい資格ですが、社会からのニーズも高いです。
労働に直結する資格なので、取得後は様々なステージでの活躍が見込めます。
労働安全や労働環境を整えて、社会貢献を目指したい人は、ぜひ労働安全・労働衛生コンサルタントの資格取得を目指してみてください。