妊娠と仕事を両立するには?会社の対応義務・期待できる具体的な措置など

妊娠は新しい家族ができる喜ばしいことです。

しかしながら、出産が近づくにつれて体には様々な変化が出てきて、仕事に少なからぬ影響を与えることになるでしょう。

そのため、働く女性は妊娠と仕事をどのようにして両立させればいいのかと悩むことになります。

今回の記事では、妊娠と仕事を両立させるべく会社に求められる対応について解説をしていきます。

記事の執筆者
LS編集部

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悪阻の症状と影響とは?

妊娠をすることで体に起こる変化の一つが、悪阻(つわり)です。

悪阻は医学的に「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と言い、具体的な原因は解明されていません。

  • 赤ちゃんに父親の遺伝子が含まれるために体から「異物」と認識されて拒絶反応が起きている
  • 妊娠でホルモンバランスが崩れて自律神経が乱れた

というのが一般的に考えられている原因です。

いずれの原因にしても誰もが悪阻に苦しむ可能性があり、医学的には病気ではないとは言え、無視のできないものであることは確かです。

悪阻の症状

その悪阻の症状を挙げていくと、まず最も起きやすいのが吐き気です。

特ににおいを引き金にして起こる悪阻の割合が多く、今までは普通に食べることができた炊きたての御飯などに反応してしまいます。

症状としては他にも、食欲不振・脱水症状・便秘・眠気といったものがあります。

仕事への影響

その悪阻がもたらす仕事の影響は、個人差もありますが軽いものではありません。

食事がまともにできないとなれば、体を動かすエネルギーを補給することができないので、長時間の作業ができません。

また、吐き気に襲われたときには、持ち場を離れてトイレに駆け込むことになるでしょう。

脱水や眠気がひどいときには、立っていることも難しくなります。

仕事に集中できる時間は、妊娠していないときに比べて減少することは避けられません。

会社での対応義務は?

悪阻が仕事に影響を与えるようになったら、仕事とどうやって両立させれば良いのかというのが悩みどころです。

そこで知っておきたいのが、会社には女性労働者を守るために適切な対応を取ることが義務付けられていることです。

働き方への配慮

男女雇用機会均等法第13条では、妊娠をした女性が健康診査等を受けた後に医師から指導されたことを守れるように、事業主が必要な措置を講じなければならないと書かれています。

その法律に遵守するために、会社は妊娠をした女性労働者に対して

  • 通勤の負担を軽減する
  • 休憩を取りやすくする

など、働き方を配慮しなければいけません。

不利益となる扱いの禁止

同じく男女雇用機会均等法9条では、妊娠・出産等を理由とした解雇や降格などの不利益となる取り扱いを禁止していますし、労働基準法にも様々な母性保護規定が盛り込まれています。

もし、会社が法に反して妊娠した女性労働者に対して不当な扱いを行えば、罰則が科せられることになるでしょう。

妊娠をしたら仕事を辞めなければいけないと考えている人もいるでしょうが、この法律により女性労働者が不当な扱いから守られるので心配無用です。

ハラスメントの防止措置

しかし、妊娠した女性労働者を守る法があったとしても、現場で無視されていては意味がありません。

そこで会社には、ハラスメントの防止措置という対応も求められます。

ハラスメントというのは、例えば一緒に働く上司や同僚から足手まといだとか迷惑と言われることです。

そのようなハラスメントを防ぐために、2022年4月より全ての企業が状況の把握と改善に向けて動くハラスメント相談窓口を設置することが義務付けられています。

なお相談をしたことが、さらなる不利益を招くことがないように会社が気をつける必要があります。

職場に報告する方法・タイミングはいつ?

会社に妊娠を報告するタイミングというのは、明確なルールが定められていません。

しかし、悪阻が始まったら仕事への影響が出てくるので、報告を遅らせると迷惑をかけることになります。

妊娠4ヶ月から5ヶ月ごろが安定期にあたりますが、それよりも早い妊娠2ヶ月から3ヶ月ごろには仕事で深く関わる上司や人事担当者、同僚たちには話をしておくと良いでしょう。

報告の方法は、上司や人事担当者には直接伝えるのがベターでしょう。

上下関係のない同僚たちであれば、メールやSNSを通じた報告でも問題ありません。

診断書・母性健康管理指導事項連絡カードを活用する

母性健康管理指導事項連絡カードとは?

男女雇用機会均等法などの法律に従い、会社は妊娠をした女性労働者に対して母性を守るため必要な措置を講じなければいけません。

そこで会社が妊娠をした女性労働者に必要な措置とは何かを知るために使われるのが、医師や助産師からの指導を記入した母性健康管理指導事項連絡カード(母権連絡カード)です。

男女雇用機会均等法第13条という法的根拠を持っており、様式を守っていれば効力を発揮します。

一から内容を考える診断書とは違い、該当する指導事項に丸をつけていくだけなので、医師や助産師の負担が軽く簡単に発行できることがメリットです。

母性健康管理指導事項連絡カードの入手方法は?

入手方法は、厚生労働省のホームページより書類のテンプレートをダウンロードできるので、印刷をして医師や助産師に記入をしてもらうだけです。

受け取るときには医療機関名・医師名・捺印があることを確認しましょう。

自治体によっては、母子手帳に様式が記載されたページがついていることもあるので、それをコピーしても構いません。

記入し終わった母性健康管理指導事項連絡カードは、人事担当者・管理者・産業医に提出をすることで必要な措置が講じられます。

費用は、病院ごとに異なりますが2,000円程度が目安です。

無理は厳禁、休業という選択肢も

悪阻がひどいときには、いくらやる気があっても仕事ができないこともあります。

それでも無理をして働こうとすれば、母子の健康に影響が出るかもしれません。

そのようなときには、休業することも選択肢の一つです。

悪阻での休業は医師に診断書あるいは母性健康管理指導事項連絡カードを発行してもらい提出すれば、申請ができます。

費用については病院ごとに金額が異なりますが、診断書よりも母性健康管理指導事項連絡カードの方が安いというのが一般的です。

妊娠・出産で出費がかさむことに悩んでいるならば、簡単かつ安価な母性健康管理指導事項連絡カードで休業の申請をしましょう。

期待できる具体的な措置とは?

通勤の緩和

特に都市部であれば、交通機関が混雑します。

電車やバスのラッシュアワーに乗り込もうものならば、お腹が圧迫されてしまいますし、座ることができずに長時間立っているだけでも相当な負担です。

そのことで貧血やむくみといった症状が出る恐れもあります。

通勤緩和とは、通勤の負担を減らすべく時差出勤や勤務時間の短縮で公共交通機関のラッシュアワーを避けられるようにしたり、交通費がかかるけれども混雑しない通勤方法を認めると言った措置のことです。

休憩に関する対応

妊娠中は、悪阻で長時間の勤務ができなかったり、栄養を摂るためにこまめな食事が必要となります。

そこで休憩時間を通常よりも長めにしたり回数を多くしたりすることで、健康を維持できるようにすることが休憩に関する措置です。

状況によって適切な時間や回数は変わるので、妊娠をした女性労働者と機会均等推進責任者などの担当者はよく相談をして措置を講じなければいけません。

作業の制限

妊娠をすると、体に負担がかかる作業は母子の危険を招きます。

そのため、デスクワークや軽い荷物を運ぶ作業への転換をしてもらうことになるでしょう。

女性労働基準規則第2条第1項では、「妊産婦等の就業制限の業務の範囲」が規定されています。

  • 重量物の取り扱い業務
  • ボイラーの取り扱いをする業務
  • 5メートル以上の高所作業

などは、本人が希望しても就かせてはならない業務と規定されています。

該当する業務に就いており、妊娠が判明したら即座に会社に連絡をして適切な措置を講じてもらうことが望ましいです。

悪阻が辛い時に休める期間は?

労働基準法では、本人が休業を希望すれば出産予定日の6週間前から産前休業を取れるという規定があります。

しかし、悪阻による休業については、何も法律で休める期間を定めていません。

状況に応じて休業を取るということで、人によっては長く休むことになるでしょう。

男女雇用機会均等法により、休みが長引いたとしても会社は解雇することはできません。

それでも休業する日数を抑えたいのであれば、会社に時短勤務や作業の制限といった措置を講じてもらうことで軽い悪阻をしのぎ、辛い悪阻のときだけ休業するようにしましょう。

最後に

妊娠をすると、悪阻のために本来の実力を発揮できないときもでてきます。

その苦しみを感じているときは、妊娠と仕事の両立は難しいことに感じるでしょう。

しかし、子どもを産もうとする女性労働者のためにつくられた法律があります。

その法律があることで、会社には様々な対応を求めることができます。

そのことをよく理解していれば、悪阻で仕事に影響がでたとしても、不利益を被らずに済みます。