社会人として働いている人の中には、「人を助ける仕事をしたい」という思いを抱いている方もいるのではないでしょうか。
医者や看護師など関連した職業は数多くありますが、その中でもリハビリテーションを担うのが作業療法士です。
ここでは、作業療法士という職業の概要や具体的な仕事内容、試験の難易度などについて解説していきます。
作業療法士とは?
作業療法士というのは、簡単に言うと日常生活における活動を用いてリハビリテーションを行う専門職の一つです。
英語で””Occupational Therapis””と表記するため、頭文字をとって「OT」と略されることもあります。
この説明だけでは少しわかりづらいかもしれませんが、具体的なリハビリテーションの例として挙げられるのが「料理をする」というものです。
患者に対して料理をしてもらい、指の動かし方などを手助けしながら、一つの料理を完成させます。
これは非常に何気ないことですが、日常生活で行われる作業・活動を通し、「生きがい」や「自信」を持ってもらうのが作業療法士が行う治療の目的です。
理学療法士との違いは?
似たような職業として理学療法士がありますが、そちらは身体の基本的な動作そのもののリハビリテーションを担います。
例えば、作業療法士がリハビリテーションで患者に料理をしてもらうためには、前提として指や腕が動作している必要がありますよね。
指や腕が動かない患者の場合は、先に理学療法士がリハビリテーションを担当し、指や腕が動作するように治療します。
その後「料理」などの活動を通し、作業療法士が患者が生きがいを持てるように支援していきます。
つまり、リハビリテーションの仕上げとして生活・社会に復帰するための応用的な治療を行うのが作業療法士です。
作業療法士になるには?
作業療法士は、志願すればすぐになれる職業ではありません。
職業にするためには、試験に合格して作業療法士の国家資格を取得する必要があります。
また、国家試験を受験するには、作業療法士の養成課程がある学校で3年以上修学し課程を修了していることが必要です。
専門学校の他に養成課程のある大学もあるので、どの学校に通うかは好みによって分かれる点でしょう。
ただし、それらの学校に入学するためには、最低でも高等学校の卒業資格を取得していなければなりません。
社会人から目指すには?
社会人が注意すべきなのは「養成課程のある学校に通う」という点です。
短期大学に通う方法はあるものの、最低でも3年以上修学する必要があります。
勉強のためというよりは、受験の条件を満たすために必要となる手順なので、「学校に通わずに、通信講座で試験勉強して合格」はできません。
仕事と両立しながら学校に通うのは難しい場合、可能であれば貯金した状態で仕事を休業して通学に専念するのがおすすめです。
作業療法士の仕事内容は?
患者が生きがいを持てるよう手助けし、最終的に生活や社会に復帰できるようリハビリテーションを行うことが作業療法士の仕事です。
そのため、仕事内容は応用的な動作の改善・維持などのケアが主なものになります。
一方、作業療法士と一口に言っても、担当する領域は人によって異なるものです。
例えば、ダンスや体操といった運動能力のケアを行う場合もあれば、食事や料理、トイレといった日常生活で必要な活動のケアを行う作業療法士もいます。
これらは患者のニーズや環境、心身の状態によって異なるので、作業療法士はさまざまな治療に対応する知識や経験が必要とされるのです。
作業療法士の働き先は?
作業療法士の働き先は、患者の領域によって分けられます。
それぞれの領域によって働き先が異なるのと同時に、求められる役割や業務にも違いがあるので、よく確認しておくのが良いでしょう。
身体障がいがある患者
身体障がいの領域を担当する働き先として挙げられるのが、病院やリハビリテーションセンターです。
ここでの仕事は、日常生活で必要となる体の動かし方を教えたり、筋力などの回復を手助けしたりするのが主になります。
生まれたときから身体障がいがある患者もいれば、事故などの後遺症が原因で身体が麻痺している患者もおり、場合によっては理学療法士が担当するような業務を任せられることもある環境です。
作業療法士として、患者に合わせた柔軟な対応が求められる就職先だといえるでしょう。
精神障がいがある患者
精神障がい領域の就職先は、主に精神科病院や支援センターなどです。
ここでは、何かしらの原因で精神に問題を抱えてしまった患者に対し、スポーツや料理などを通じて、楽しみや生きがいを見つけてもらうことが作業療法士の役目になります。
最終的に日常生活に対して意欲的になってもらうことが目的です。
身体のケアだけではなく精神面でのケアも重視されるため、作業療法士の専門分野だといえます。
発達障がいがある患者
働き先としては少し珍しいですが、発達障がいの児童がいる病院や児童福祉施設なども作業療法士の働き先として挙げられます。
ここでは、発達障がいがある子どもたちに対して、道具や物の使い方、人との接し方などを指導していくのが主な仕事になります。
主な患者が子どもになるため、作業療法士としてのスキルだけでなく、親代わりになる丁寧な指導が必要とされる場所です。
作業療法士の難易度は?
国家試験と聞くと難しく感じるかもしれませんが、作業療法士の試験自体はそれほど難しくはありません。
全体的な合格率を見ても、おおよそ70〜80%以上の合格率をキープしています。
ただし、合格率が高いのは受験者がある程度絞られているからです。
勉強しなくても簡単に合格できるというわけではないので、養成課程での勉強だけでなく、試験対策も欠かさないようにしましょう。
作業療法士の試験内容は?
作業療法士の国家試験は、午前の問題が100問、午後の問題100問の合計200問で構成されています。
大きく分けて一般問題と実地問題に分けられ、それぞれで出題範囲が異なるので注意が必要です。
一般問題では解剖学や生理学、リハビリテーション概論など、作業療法に関わる広い範囲から問題が出題されます。
実地問題では運動学や臨床心理学、リハビリテーション医学などから出題されるので、どちらもしっかり勉強しておくことが必要です。
また、作業療法士の試験は基準点を満たしているかどうかによって合否が決められます。
一般問題と実地問題の合計点数が168点以上であれば基本的には合格です。
ただし、実地問題が43点未満の場合は合格にならないので、注意しましょう。
ちなみに一般問題は160点満点、実地問題は120点満点で、合計点数は280点満点です。
まとめ
作業療法士になるためには国家試験を受ける必要がありますが、養成課程のある学校を修了できていなければ受験ができません。
そのため、既に社会人として働いている場合、新たに学校に通って養成課程を修了する必要があります。
頑張って仕事との両立をするのか、一度仕事を休んで通学に専念するのか、自分に合った方法を探してみましょう。