救急救命士とは、急な病気や怪我などで苦しんでいる人を救急車で病院まで搬送する間に特定の医療行為を行うことができる救急医療のスペシャリストです。
近年、高齢化が進むにつれて大きな注目を集めている救急救命士とはどのような仕事なのか、資格の取得方法や国家試験の難易度、資格を取得するメリットなどを紹介します。
救急救命士とは?
区分 | 国家資格 |
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カテゴリ | 医療 |
受験資格 | ・専門学校または養成施設を卒業 ・大学で指定科目を修了 ・5年以上または2000時間以上の実務経験+講習受講 |
試験日程 | 毎年3月 |
試験方法 | 筆記試験 |
試験会場 | 北海道・東京都・愛知県 大阪府・福岡県 |
受験料 | 30,300円 |
登録・更新 | 合格後に要登録 |
難易度 | |
おすすめな人 | 学生 社会人 |
私達が急に重い怪我や病気をしたときに119番ダイヤルすると救急車が駆けつけてくれ、病院へ搬送されます。
救急車には救急隊員が乗車しており、病院に到着するまでの間にさまざまな医療行為が行われます。
そのような救急現場で、医師の指示を受けながら医療行為を行えるスペシャリストが救急救命士です。
救急車に乗っている隊員はすべて救急救命士かというとそうではなく、厚生労働省が認定する国家資格を持っている者のみが救急救命士として活動することができます。
医師の指示のもとに医療行為を行う
救急救命士は、傷病者が病院に到着するまでの間、救急車の中で医師の指示のもと医療行為を行うことが許されていますが、すべての医療行為が行えるというわけではありません。
傷病者を病院へ搬送するにあたり、医療機関は救急救命士がスムーズに救命行為を行えるように処置の内容や手順を電話や無線で指示します。
医師から指示を受けた救急救命士は、心肺停止状態の患者への輸液、医療器具を用いての気道確保、心肺停止前の患者に対しては静脈路確保と輸液などの特定行為を行うことができます。
また、これらの他にも、心電図や血圧計、聴診器を使用したり、吸引器による異物の除去、酸素吸入器の使用なども医師の指示のもとで行うことができます。
さらに、一般人でも行える心臓マッサージやAEDを使用した心肺回復処置、圧迫止血なども必要に応じて行います。
救急救命士がこれらの医療行為を行う際には家族の同意を得る必要があります。
救急救命士は、医師の指示を受けていることと家族の同意を得ていることの条件を満たした時に、救急救命行為を行うことができるのです。
救急救命士を取得するメリットは?
やりがい
救急救命士を取得する一番のメリットはやりがいです。
救急救命士は、救急医療の現場においてとても大切な役割を担っています。
救急医療の現場では、早期の段階でどれだけ傷病人に対して適切な処置ができるかで患者の救命率や予後に大きく関わります。
高齢化に伴って今後も救急需要が高まることが予想されていて、救急救命士の育成や運用体制の拡充が検討されています。
また、現在認められている特定の医療行為だけでなく、それ以上も認めるべきとの意見も増えてきており、救急救命士に対する社会的な期待はさらに大きくなっていくでしょう。
社会的に大きな期待が寄せられ、目の前の傷病人に対してできることが増えればさらにやりがいは増していきます。
緊急時に目の前の患者の命を助けたという経験や本人やその家族から伝えられる感謝の言葉が仕事のやりがいやモチベーションにつながっていくことでしょう。
給与が高い
また、救急救命士は業務内容が特殊で責任のある仕事のため、一般的な公務員よりも給与が高めの傾向があります。
仕事の収入は生活に直結するため、やりがいだけで続けるのは難しい一面があります。
救急救命士の給与は、20代では平均約400万円〜500万円ですが、30代頃からは他の職業と比べて高くなる傾向があるというのも救急救命士の資格を取得するメリットのひとつです。
救急救命士の取得方法は?
国家試験に合格
救急救命士の資格を取得する方法は、現在2パターンあります。
1つ目は、高校卒業後、厚生労働大臣が指定する専門学校または養成施設を卒業すること、もしくは大学で指定目を修了することで救急救命士国家試験の受験資格を得る方法です。
2つ目は、消防官として実務経験を積んでから国家試験を受ける方法です。
救急救命士国家試験は、消防官として5年以上または2,000時間以上の救急業務を経験したあと、養成所で講習を受けることで受験資格を得ることができます。
このどちらかの過程を経て、年に一度実施されている国家試験に合格すると救急救命士の資格を得ることができます。
資格取得後に採用試験がある
ただし、救急救命士の多くは消防署が勤務先となります。
救急救命士として働くにあたり、救急救命士国家試験に合格しただけでは、救急救命士の仕事ができるわけではないので注意しましょう。
救急救命士国家試験を突破した後に、消防官になるための採用試験を受験して合格してはじめて救急救命士として活躍できるようになります。
したがって、救急救命士国家試験と消防官採用試験の試験対策を並行して行う必要があることを覚えておきましょう。
救急救命士の難易度は?
受験者数 | 合格率 | |
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2023年 | 3,255人 | 93.8% |
2022年 | 3,263人 | 91.3% |
2021年 | 2,999人 | 86.7% |
2020年 | 2,960人 | 87.0% |
2019年 | 3,105人 | 91.9% |
国家試験の合格率は例年80%以上となっています。
看護師など他の医療系の国家資格と比べると難易度はやや低めといえます。
ただし、この数字は救急救命士として活躍したいと考えている人がきちんと試験対策をしたうえでの合格率です。
試験内容としては、救急救命士として活躍するのに必要な医学の基礎知識や治療技術について出題されます。
基本的な問題が多く出題されるので、養成校で基礎知識や専門知識を吸収していれば合格することは難しくありません。
基本となる問題をしっかり抑えておくことが大きなポイントです。
救急救命士はこんな人におすすめ!
意志が強い人
救急救命士は、救急現場や災害現場などに赴いて傷病者の搬送や応急処置をするため、危険と隣り合わせの仕事です。
人命救助に関わる仕事のためとてもやりがいを感じられる仕事ですが、その一方でプレッシャーが大きく、ハードな仕事内容のため大変なことがたくさんあります。
救急救命士は、目の前の人の命を救いたいという強い意思のある人におすすめの仕事です。
タフな人
救急車は119ダイヤルするといつでも駆けつけてくれます。
いつでも救急車に乗って傷病者の元へ駆けつけてくれる救急救命士の仕事は、24時間体制でもちろん夜勤もあります。
実は救急救命士の勤務体系は、24時間勤務から休みのサイクルを繰り返すため、長時間勤務をしながら危険と隣り合わせの現場で働いています。
残念ながらどんなに目の前の患者に尽くしても、すべての人の命が救えるというわけではありません。
命を救いたいという想いが強いほど、目の前の患者の命が救えなかった時に辛く感じてしまいます。
したがって、肉体的にも精神的にもタフな人に向いている仕事です。
継続的に努力できる人
救急現場で活躍する救急救命士は、病気や怪我などの医療分野や災害に関するさまざまな知識が必要となります。
これらの知識はどんどん更新されるため、知識を継続して吸収できる勤勉さが必要です。
大変な勤務の日々の中で、トレーニングや勉強を継続的に行う努力が必要となる仕事です。
救急救命士として活躍するためには
救急救命士は、救急現場や災害現場などで医師の指導のもとに応急処置を行うことができる仕事です。
国家試験に合格すると資格を取得できますが、救急救命士として活躍するためには消防官採用試験を突破する必要があるので、試験勉強は並行して行うことをおすすめします。
救急救命士はとてもやりがいのある仕事ですが、体力的にも精神的にもハードな仕事のため人の命を救いたいという強い気持ちがないと続けることが難しい仕事です。