公立保育園への転職を考えているけれど、具体的な方法がわからないという人もいるでしょう。
公務員である公立保育園の保育士は、私立保育園で働く場合とは採用方法が異なります。
この記事では、保育士が公立保育園に転職する方法をまとめました。
働きながら公務員試験を目指す方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
公立保育園で働く保育士の雇用形態を知ろう!
公立保育園への転職を考える前提として、公立保育園で働く保育士の雇用形態を知っておきましょう。
公立保育園で働く場合、4種類の雇用形態が考えられます。
- 正規職員
- 臨時職員
- 嘱託職員:定年退職後に再雇用された保育士を意味することが多い
- 派遣保育士:人材派遣会社を通して働く保育士
このうち、転職する際に知っておきたいのが「正規職員」と「臨時職員」です。
正規職員
正規職員は、雇用期間に制限のない公務員です。
クラス担任や主任といった責任あるポジションを任されるのは、主に正規職員。
給与や福利厚生などの条件は、自治体の公務員と同様です。
正規職員になるには、保育士試験とは別に、公務員試験に合格する必要があります。
この記事では、正規職員として公立保育園で働く方法についてお伝えしていきます。
臨時職員
臨時職員は有期契約となります。
雇用期間は一律ではなく、6か月~1年くらいとしている自治体が多いです。
臨時職員は、正規職員の退職や長期休暇により、人手不足となった場合に採用されます。
多くの場合、正規職員の補助的な役割を求められる臨時職員。
保育士不足となっている自治体ではクラス担任を受け持つこともあるようです。
仕事面では正規職員とそれほど違いはありませんが、待遇に関しては大きく異なります。
臨時職員の給与がアップする可能性は低いですし、ボーナスや退職金は支払われないのが一般的です。
臨時職員は正式な公務員ではないため、公務員試験に合格する必要はありません。
私立保育園のように、履歴書と面接のみで採用・不採用が決定します。
現在、公立保育園でも人手不足な園が多いため、臨時職員の採用を積極的に行っている自治体もあるようです。
ちなみに、臨時職員として働いたからといって、公務員試験に有利になることはありません。
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公立保育園の保育士になるまでの流れは?
公立保育園で正規職員として働くには、どのような経緯が必要なのでしょうか。
公立保育園に採用されるまでの流れを紹介します。
1.保育士資格を取得する
保育士として保育園で働くには、保育士資格が必要です。
保育士の公務員試験の受験資格にも「保育士資格を有している方、または次年度までに保育士資格取得見込みの方」のような文言があります。
現在保育士として働いている人は保育士資格を取得しているでしょうから、次の段階からが重要となります。
2.公務員試験に合格する
公立保育園の正規職員として働くには、公務員試験に合格することが必須です。
募集要項や試験内容は、自治体によって異なりますので、受験前にしっかりと確認しておきましょう。
保育士の公務員試験は、毎年必ず実施されるものではありません。
年度によっては実施されないこともありますので、注意してくださいね。
3.採用候補者名簿に登録される
公務員試験に合格したからといって、即採用となるわけではありません。
公務員試験に合格すると、まず採用候補者名簿に登録されます。
4.採用の連絡を待つ
採用候補者名簿に登録される期間は1年間。
この間に採用を希望する施設があれば、公務員保育士として仕事ができる仕組みになっています。
勤務先がわかる時期は、年度末になることが多いようです。
異動の内示に合わせて通知されるため、勤務開始日ギリギリになって勤務場所が明らかになることも珍しくありません。
保育士の公務員試験とは?
保育士の公務員試験について、くわしくみていきましょう。
募集時期:早めにチェックしよう
保育士の公務員試験が行われる日程や募集要項は、自治体によって異なります。
希望する自治体で行われた過去の試験日程なども参考にして、早めにチェックしておきましょう。
2021年度の実施状況を見ると、6~9月頃に一次試験を行う自治体が多いようです。
また、二次試験は、多くの自治体で一次試験の約1~2か月後に実施されています。
受験者の募集は一次試験の1か月ほど前から開始されますので、HPをこまめに確認しておきましょう。
「正規職員として公立保育園に転職したい!」という気持ちが強いのであれば、複数の自治体を候補として考えておくことをおすすめします。
前述したように、保育士の公務員試験は毎年実施されるとは限りません。
ひとつの自治体のみに絞っていると、試験がなかった場合、その年度を棒に振ってしまうこともあるのです。
そのようなことにならないためにも、日程が重ならない自治体の公務員試験をいくつか候補として確認しておくとよいでしょう。
受験資格:年齢制限に注意しよう
公務員試験には受験資格があります。
特に転職を考えるときには、年齢制限に注意が必要です。
公務員試験の準備をはじめる前に、希望する自治体の受験資格を必ず確認しておきましょう。
基本的には、29~35歳くらいの年齢を上限としている自治体が多いようです。
たとえば、2021年度に行われた東京都八王子市の公務員試験の場合、「平成2年4月2日から平成12年4月1日までに生まれた方」とあり、31歳まで受験可能となっていました。
ちなみに公務員試験では、経験者採用枠を設けている自治体もあります。
採用人数は少ないものの、年齢制限はだいぶ緩和されますので、年齢が高い人は経験者採用枠を検討してみてもよいでしょう。
実際、2021年度に行われた東京都八王子市の経験者採用枠の受験資格は、「昭和46年4月2日から平成7年4月1日までに生まれた方」でしたので、50歳まで受験可能だったようです。
参考:<受付終了>令和3年度(2021年度)八王子市職員採用試験の実施について【保育士・栄養士・保健師・看護教員】(令和4年(2022年)4月1日採用)|八王子市公式ホームページ
試験内容:一次試験と二次試験がある
公務員試験には、一次試験と二次試験があります。
一次試験に合格した人のみが、二次試験に進める仕組みです。
自治体によって一次試験・二次試験の試験内容は異なりますので、あらかじめしっかりと確認しておいてくださいね。
ここでは一般的な試験内容についてお伝えします。
一次試験:筆記試験
一次試験には、筆記試験を採用している自治体がほとんどです。
試験では、一般教養と専門知識を問う問題が出題されます。
そのほか、SPI試験を採用している自治体もあるようです。
一般教養分野
社会科学や自然科学、時事問題、数的処理など幅広い知識と能力が必要です。
レベルとしては、高校卒業程度が求められます。
専門知識を問う分野
一般的に、保育士試験の内容に準じて出題されます。
とくに保育士試験受験から年月が経っている人は、勉強し直す必要があるでしょう。
SPI試験
一般的な知的能力などを測ります。
言語理解や数的処理、論理的思考力などが問われます。
二次試験:実技試験・面接など
二次試験の内容は自治体によって大きく異なります。
ただ、多くの自治体では実技試験と面接を実施しているようです。
実技試験には、以下のような内容があります。
- ピアノ演奏
- 絵画
- 手遊び
- 読み聞かせ
ピアノ演奏では、童謡を弾きながら歌う課題が一般的です。
課題曲は事前に知らされることが多いため、試験日まで練習ができるでしょう。
絵画や手遊び、読み聞かせの課題は、当日発表されることが多いようです。
うまい・へたを見るというより、いかに工夫できるか、いかに表現できるかが重視されているといった情報も見られます。
実技試験以外には、面接や小論文、グループワークなどを課す自治体もあるようです。
自治体が公表する募集要項にくわしい試験内容が記載されますので、しっかりと確認しておきましょう。
倍率:自治体や年度によって大きな差がある
保育士の公務員試験の場合、その倍率は自治体や年度によって大きな差があります。
こちらの資料によると、2020年度の東京都八王子市の場合、28.5倍という非常に高い倍率となっています。
そのほかの関東地方の各自治体で2020年度に行われた公務員試験では、2~6倍という倍率が多いです。
このことからも、自治体によって倍率に大きな差があることがわかるでしょう。
また、2018年度の倍率が15.2倍だった神奈川県小田原市ですが、2020年度には 5.7倍と比較的落ち着いています。
このように、年度によっても倍率が大きく異なるケースがありますので、知っておきましょう。
合格の目安:合格基準は明確でない
一次試験合格の目安は、およそ70%以上と言われています。
ただし、公務員試験は、得点の高い受験者から合格とするため、明確な基準はありません。
そのため、少しでも高い得点を取れるよう準備しておくことが大切です。
働きながら公務員試験に合格できる?
結論から言うと、働きながらでも公務員試験に合格することは可能です。
働きながら公務員試験に合格するためには、
- 勉強時間を確保できるか
- 自分に合う勉強法を見つけられるか
がポイントとなるでしょう。
【ポイント1】勉強時間を確保できるか
公務員試験は範囲が非常に広く、決して簡単な内容ではありません。
働きながら公務員試験合格を目指すには、勉強時間の確保が大きな鍵となるでしょう。
大手予備校の保育士公務員試験対策コースとしては、6か月程度を確保しているようです。
また、公務員試験に向けて、1年くらい時間をかけて独学をしたという人もいます。
働きながら公務員試験に合格するためには、半年~1年くらいの時間が必要なようです。
【ポイント2】自分に合う勉強方法を見つけられるか
公務員試験の勉強をする方法は主に3種類あります。
- 独学
- 通信講座
- 予備校
それぞれメリットやデメリットがありますので、自分に合うものを選びましょう。
独学
働きながら自分のペースで勉強をしたい人には、独学がおすすめです。
独学のメリットは、自分の予定に合わせて勉強を続けられたり、費用がかからなかったりといったこと。
一方、自分で計画を立てなければいけないことや、モチベーションを維持しなければならないことは、独学の難しさかもしれません。
通信講座
勉強の進め方に自信がない人は、通信講座を利用するのもひとつの方法です。
勉強時間の確保が難しいため、効率的に勉強を進めたいと考えている人にも適しているでしょう。
スマホやタブレットを使って講義を受講できるような通信講座もあるようですよ。
予備校
ひとりで勉強をするのが苦手な人やモチベーションを維持できない人には、予備校に通うという選択肢もあります。
公務員試験に関する最新情報を入手できたり、仲間の存在が刺激となったりすることもあるでしょう。
ただし、予備校に通う場合、通学時間を確保する必要があります。
働きながら予備校に通えるかどうか、しっかりと検討してくださいね。
【試験分野別】保育士の公務員試験に合格するための勉強方法は?
ここからは保育士が公務員試験に合格するための勉強方法をお伝えします。
一般教養分野:過去問でポイントをしぼろう
公務員試験の一般教養分野は非常に範囲が広いため、ただ漠然と勉強していても合格には近づけません。
まず、受験する自治体の過去問をチェックし、出題傾向をつかむことが大切です。
少なくとも過去5年分の過去問に目を通しておきましょう。
出題傾向を把握できたら、本格的に公務員試験の参考書で勉強します。
参考書の選び方は人それぞれ。
口コミがよいものや、多くの人が使っているものを選ぶのもよいでしょう。
また、中身を実際に見て、自分にとってわかりやすい参考書を選ぶという方法もおすすめです。
働きながら公務員試験に合格した人の中には、1冊の参考書を繰り返し解くことが大切だと感じている人もいるようですので、参考にしてみてください。
一般教養分野では、出題形式がパターン化していることも多いです。
過去問を中心に多くの問題を解くことで、出題パターンに慣れておきましょう。
専門分野:保育士試験対策と同様でOK
専門分野の試験は、基本的に保育士試験と同様の内容が出題されます。
そのため、保育士試験対策と同じような勉強方法でよさそうです。
参考書を活用したり過去問を解いたりして、内容を再確認しておきましょう。
しかし中には、保育とはあまり関係のない問題を出題している自治体もあるのだとか。
そのため、専門分野に関しても過去問のチェックをおすすめします。
面接:予想される質問の答えを用意しておこう
面接では、真摯に答えようとする姿勢が大切です。
回答だけでなく態度もチェックされているため、明るい雰囲気を心がけましょう。
志望動機
自己PR
保育士という仕事への熱意
このような定番の質問に対しては、あらかじめ答えを考えておくと、落ち着いて面接を受けられるでしょう。
また、「このような場面であなたはどう対応しますか?」といった、ロールプレイング形式の質問をされることもあります。
今までの実務経験を生かして、具体的な回答ができるとよいでしょう。
保育士は、子どもや保護者とコミュニケーションをとることが求められる職業です。
そのため、面接は重視されていると考えられています。
自分の考えを言葉でしっかりと伝えることや、笑顔で受け答えができるよう、繰り返し練習しておきましょう。
小論文:過去のテーマをチェックしておこう
小論文が課される場合も、過去に出題されたテーマを確認しておくことが大切です。
時間内に指定文字数で自分の考えをまとめるのは、意外と難しいもの。
書き方を勉強し、書くことに慣れるよう練習しておきましょう。
過去に出題されたテーマも加えて、
- 目指す保育士像
- 最近のニュース
- 自治体が抱える保育の問題点
などを想定して、練習してみてはいかがでしょうか。
書けたら第三者に読んでもらい、添削をしてもらうとよりよいでしょう。
まとめ
働きながら公務員試験を目指すことは可能です。
しかし、コツコツと勉強する必要があるため、簡単なことではないでしょう。
また、公務員試験に合格できたとしても、希望通り公立保育園で働けるかどうかはわかりません。
これらのことも頭に入れて、公務員試験を目指すかどうか決めましょう。
公務員試験を目指すことに決めたら、過去問なども活用してしっかりと対策を行い、合格できるようがんばってくださいね。